Lesson 1
製造原価報告書と製造業の財務諸表
このレッスンで学ぶこと
製造に使った原価は、すべてがすぐ当期の費用になるわけではありません。製造原価報告書で完成品の原価を求め、売上原価・利益・期末の棚卸資産へつなげます。

販売した分の原価と、未完成・未販売で資産に残る原価を分けます。
製造費用を材料費・労務費・経費にまとめる
製造原価報告書は、製造にかかった原価から当期製品製造原価を計算する資料です。当期製品製造原価は、当期に完成した製品の原価を指します。
当期製造費用=当期の材料費+労務費+経費
材料費には使った材料の原価、労務費には製造に使った労働の原価、経費にはそれ以外の製造原価をまとめます。材料の購入額と当期消費額、給料の支払額と当期労務費は、必要な期間調整をしたうえで区別します。
材料費・労務費・経費には、それぞれ直接費と間接費が含まれます。この三つで製造費用を集計した後に、同じ間接費を製造間接費として重ねて加算しません。
仕掛品の増減から完成品原価を求める
当期製品製造原価=期首仕掛品原価+当期製造費用−期末仕掛品原価
前期から製造中の原価を引き継ぐため、期首仕掛品を足します。期末時点で未完成の分はまだ製品になっていないため、差し引いて仕掛品として残します。
完成品原価を求めたら、販売した原価は次の式で計算します。
売上原価=期首製品原価+当期製品製造原価−期末製品原価
当期に完成した分だけでなく、期首から持っていた製品も販売の対象になります。逆に、期末に未販売で残る原価は当期売上原価へ含めません。
例題:製造原価から利益までつなぐ
全部原価計算による当期の製造費用は、材料費12,000円・労務費8,000円・経費4,000円であった。期首仕掛品6,000円、期末仕掛品4,000円、期首製品5,000円、期末製品3,000円で、原価差異はなかった。当期売上高は40,000円、販売費及び一般管理費は7,000円であった。
当期製品製造原価、売上原価、売上総利益、営業利益を求めなさい。
解答と解説
製造原価報告書
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 材料費 | 12,000 |
| 労務費 | 8,000 |
| 経費 | 4,000 |
| 当期製造費用 | 24,000 |
| 期首仕掛品原価 | 6,000 |
| 合計 | 30,000 |
| 控除:期末仕掛品原価 | 4,000 |
| 当期製品製造原価 | 26,000 |
金額の単位は円です。当期に発生した製造費用24,000円に期首仕掛品6,000円を加え、未完成4,000円を残すので、完成品は26,000円です。
売上原価と利益
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上高 | 40,000 |
| 期首製品原価 | 5,000 |
| 当期製品製造原価 | 26,000 |
| 販売可能な製品原価合計 | 31,000 |
| 控除:期末製品原価 | 3,000 |
| 売上原価 | 28,000 |
| 売上総利益 | 12,000 |
| 販売費及び一般管理費 | 7,000 |
| 営業利益 | 5,000 |
売上原価は5,000+26,000−3,000=28,000円です。売上総利益は40,000−28,000=12,000円、営業利益は12,000−7,000=5,000円になります。
販売費及び一般管理費7,000円は、製造原価報告書の製造費用へ加えるのではなく、売上総利益から差し引きます。
貸借対照表に残る原価
期末にまだ使っていない材料、製造中の仕掛品、未販売の製品は、棚卸資産として貸借対照表へ残ります。
| 期末の状態 | 資産の内容 |
|---|---|
| まだ使っていない | 材料 |
| 製造中 | 仕掛品 |
| 完成して未販売 | 製品 |
前の例では仕掛品4,000円と製品3,000円が残ります。別に期末材料4,000円があれば、これらの棚卸資産合計は11,000円です。当期の製造費用や売上原価へ、同じ残高をもう一度加えるわけではありません。
例えば材料の期首2,000円・当期購入14,000円・期末4,000円で、減耗などがなければ、当期材料消費額は2,000+14,000−4,000=12,000円です。期末に残る分と、当期に使った分を分けます。
予定配賦差異が表示されている報告書
製造原価報告書の様式には、「材料費・労務費・経費」の形だけでなく、「直接材料費・直接労務費・製造間接費」の形もあります。後者では製造間接費に間接材料費・間接労務費・間接経費をまとめます。既にまとめた間接費を重ねて足さない点は、最初の分類と同じです。
製造間接費を予定配賦している場合、仕掛品に集まるのは予定配賦額です。報告書に実際発生額と配賦差異の両方が示されていたら、実際額を予定配賦額へ直します。
例題
当月の直接材料費14,000円、直接労務費11,000円、製造間接費の実際発生額9,200円、予定配賦額8,000円とする。月初仕掛品3,000円、月末仕掛品5,000円であった。これらの仕掛品残高は予定配賦額を含んだ金額である。
(単位:円)
| 製造原価報告書の項目 | 金額 |
|---|---|
| 直接材料費 | 14,000 |
| 直接労務費 | 11,000 |
| 製造間接費・実際発生額 | 9,200 |
| 控除:製造間接費配賦差異 | 1,200 |
| 製造間接費・予定配賦額 | 8,000 |
| 当月製造費用 | 33,000 |
| 月初仕掛品 | 3,000 |
| 控除:月末仕掛品 | 5,000 |
| 当月製品製造原価 | 31,000 |
実際9,200円から不利差異1,200円を除くと、仕掛品へ入れた予定配賦額8,000円になります。「不利差異だから常に足す」と覚えると、報告書のこの欄で逆になります。
一方、この差異を全額売上原価へ振り替える指示があり、差異処理前の売上原価が33,000円なら、処理後の売上原価は33,000+1,200=34,200円です。予定額から実際の負担額へ直す場面なので、不利差異を加えます。どの金額から何へ直しているかを確かめます。
月次資料では当月発生額を使う
1か月の製造原価報告書を作る場合は、月初・当月・月末で同じ関係を使います。年度累計の費用残高が提示されているなら、前月末累計との差などから当月分を求めます。累計額をそのまま当月製造費用と呼ばないようにします。
月次損益へ締め切る
月ごとの収益と費用をまとめる勘定が「月次損益」です。最初の例題の売上40,000円・売上原価28,000円・販売費及び一般管理費7,000円がすべて当月分で記帳済みなら、これらを次のように振り替えます。販売費及び一般管理費は、ここではまとめて「営業費」勘定を使う指定とします。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 40,000 | 月次損益 | 40,000 |
| 月次損益 | 28,000 | 売上原価 | 28,000 |
| 月次損益 | 7,000 | 営業費 | 7,000 |
月次損益の貸方40,000円から借方35,000円を引いた5,000円が、この例の当月利益です。材料・仕掛品・製品の残高は資産として繰り越します。月次損益へ移すのは、当月の収益・費用です。
まとめ
材料費・労務費・経費から製造費用を集計し、仕掛品の増減で完成品原価を、製品の増減で売上原価を求めます。未使用・未完成・未販売の原価は資産に残し、販売費及び一般管理費は製造原価と分けます。