Lesson 2
工場会計の独立と本社・工場間取引
このレッスンで学ぶこと
本社と工場で帳簿を分けると、それぞれの取引を手元で整理できます。同じ会社の中の原価や資金の受け渡しを、本社側と工場側の二つの立場から記録します。

同じ会社の本社と工場が、工場勘定と本社勘定で同じ内部取引を反対側の同額に記録します。
帳簿を分けても一つの会社
工場会計の独立は、工場でも独立した帳簿を設けることです。本社と工場が別の法人になるわけではありません。
本社と工場の内部取引をつなぐため、本社側には工場勘定、工場側には本社勘定を用います。
| 記帳する側 | 内部取引の相手を表す科目 |
|---|---|
| 本社の帳簿 | 工場 |
| 工場の帳簿 | 本社 |
同じ取引を、それぞれの帳簿で対応させます。自分の帳簿でどの資産や負債が動いたかを確認してから、相手側の勘定を使います。
例題:本社が工場の材料を支払う
本社は工場で使う材料10,000円を購入し、本社の普通預金から支払った。材料は直接工場へ届いた。本社では工場勘定、工場では本社勘定を用い、消費税は考慮しない。
本社側と工場側の仕訳をそれぞれ示しなさい。
解答と解説
本社側
本社の普通預金が10,000円減ります。一方、材料を受け入れるのは工場なので、本社では材料勘定ではなく工場勘定の借方へ記録して、工場側へ渡した価値を表します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 工場 | 10,000 | 普通預金 | 10,000 |
金額の単位は円です。
工場側
工場は材料という資産を受け入れたため、材料を借方へ記録します。代金は本社が負担したので、本社勘定を貸方へ記録します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 材料 | 10,000 | 本社 | 10,000 |
本社の工場勘定の借方10,000円と、工場の本社勘定の貸方10,000円が対応しています。工場の帳簿で、本社が管理する普通預金をさらに減らさないようにします。
完成品を本社へ送る場合
工場ですでに製品勘定へ記帳した完成品12,000円を、原価のまま本社へ送り、本社が製品として受け入れたとします。
本社側では製品が増えるため借方へ記録します。工場から価値を受け入れたので、工場勘定は貸方です。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 製品 | 12,000 | 工場 | 12,000 |
工場側では製品が減るため貸方へ記録します。本社へ引き渡した分を、本社勘定の借方へ記録します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 本社 | 12,000 | 製品 | 12,000 |
今回は工場の製品勘定に完成品がすでにある条件です。完成時の振替が済んでいるか、どの勘定に原価があるかを確認します。
内部振替を外部への売上にしない
原価のまま工場から本社へ製品を送っても、会社の外へ販売したわけではありません。この内部振替で売上や売上原価を発生させません。
会社全体で見ると、製品の保管場所が工場から本社へ移っただけです。外部顧客へ販売したときの売上計上とは別に考えます。
本社勘定と工場勘定を照合する
未達取引や記帳誤りがなく、双方が同じ内部取引を記録していれば、本社の工場勘定と、工場の本社勘定は反対側の同額残高になります。
会社全体の財務諸表を作るときは、この内部の対応勘定を相殺します。同じ会社の内部の額を、外部への資産や負債として二重に残しません。
残高が一致しない場合は、片側だけ未記帳の取引がないかなどを確認します。一致させるためだけの根拠のない仕訳は行いません。
工場で使える勘定が限られる場合
問題に工場の勘定科目一覧があれば、まず確認します。次は、工場に材料・賃金・製造間接費・仕掛品・本社の勘定があり、現金と製品は本社だけで管理する場合です。
| 取引 | 工場の仕訳 |
|---|---|
| 本社が工場の電力料7,000円を現金で支払う | 製造間接費7,000/本社7,000 |
| 製品24,000円が完成し、直ちに本社へ渡る | 本社24,000/仕掛品24,000 |
本社では、それぞれ「工場7,000/現金7,000」「製品24,000/工場24,000」です。工場に製品勘定がない例では、完成分を仕掛品から本社へ直接移しています。
工場で直接材料4,000円を消費するだけなら「仕掛品4,000/材料4,000」です。両方とも工場にある勘定なので、この消費の仕訳は工場で完結します。
まとめ
本社側は工場勘定、工場側は本社勘定を使い、同じ内部取引を反対側から記録します。各側で動く資産を確かめ、内部の移動を外部への売上と混同しないようにします。