Lesson 5
標準原価差異の売上原価への振替
このレッスンで学ぶこと
標準原価差異を求めた後は、決算の原価へどう反映するかを確認します。まず、年度末の差異残高を全額売上原価へ振り替える条件で学び、後半では当月差異を月次損益へ反映する指定を扱います。

差異を全額売上原価へ振り替える条件では、不利は加え、有利は差し引きます。
不利差異は原価不足、有利差異は原価超過
標準原価に比べて実際原価が多ければ、不利差異です。標準額で計上した原価に対し、実際には余分にかかっています。売上原価へ全額反映する場合は、売上原価を増やします。
実際原価が標準より少なければ有利差異です。標準額で計上した原価が実際より多いので、売上原価を減らします。
| 差異勘定の残高 | 内容 | 売上原価への反映 |
|---|---|---|
| 借方の不利差異 | 実際原価が多い | 売上原価を増やす |
| 貸方の有利差異 | 実際原価が少ない | 売上原価を減らす |
差異を計算する処理と、その差異を年度末に売上原価へ移す処理は別です。材料や仕掛品にすでに記帳した原価を、同じ理由でもう一度計上するわけではありません。
例題:不利差異を振り替える
年度末の材料費差異勘定に、不利差異1,200円の借方残高があった。この差異は未処理であり、全額を売上原価へ振り替える。
必要な仕訳を示しなさい。
解答と解説
売上原価を1,200円増やすため、借方へ記録します。材料費差異の借方残高を消すため、材料費差異は貸方です。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上原価 | 1,200 | 材料費差異 | 1,200 |
金額の単位は円です。差異勘定の残高はゼロとなり、売上原価へその額が移りました。
有利差異の振替
作業時間差異勘定に有利差異2,000円の貸方残高があり、全額を売上原価へ振り替える場合は、次の仕訳です。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 作業時間差異 | 2,000 | 売上原価 | 2,000 |
作業時間差異を借方へ記録して貸方残高を消し、売上原価を貸方へ記録して減らします。不利差異と同じ向きに仕訳しません。
複数の差異は方向を保って合計する
差異振替前の売上原価が40,000円で、未処理差異が材料費1,200円の不利、作業時間2,000円の有利だったとします。全額を売上原価へ振り替えると、次のようになります。
振替後の売上原価=40,000+1,200−2,000=39,200円
差引では800円の有利差異なので、売上原価は800円減りました。差異の金額1,200円と2,000円を両方加えて43,200円にしないようにします。
振替仕訳で各差異勘定を消し、売上原価へ移した額と、差引の計算を一致させます。
当月差異と年度末残高を区別する
年度末には、その時点で残っている未処理の差異を確認します。当月だけの差異を、そのまま年度全体の残高とはみなしません。
例えば、前月末までの未処理不利差異1,000円に、当月有利差異400円が加わった場合、他に振替がなければ残高は差引600円の不利です。年度末に全額を売上原価へ移す条件なら、対象は600円です。
また、すでに処理した差異を重ねて振り替えません。差異の発生記録と、売上原価へ処理した記録の両方を確認します。
月次損益へ反映する指定がある場合
問題に「当月の標準原価差異を、当月の売上原価へ全額加減する」とあれば、その指示に従って月次損益計算書を作ります。年度末まで待つわけではありません。
完成品20個の標準原価が1個900円、月末仕掛品の標準原価が900円、月初仕掛品なし、当月実際製造費用19,400円とします。当月の標準原価は20×900+900=18,900円なので、500円の不利差異です。
月初製品3個・月末製品5個も同じ1個900円で評価すると、差異処理前の売上原価は2,700+18,000−4,500=16,200円です。不利差異500円を加え、処理後は16,700円になります。
| 手順 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 当月の生産分に対応する標準原価と実際費用から差異を求める |
| 2 | 月初製品+当月完成品−月末製品で標準売上原価を求める |
| 3 | 指定された当月差異を一度だけ売上原価へ加減する |
月末仕掛品の900円を売上原価へ移したり、販売した数量だけで当月の製造差異を計算したりしません。
まとめ
売上原価へ全額振り替える条件では、不利差異を加え、有利差異を差し引きます。年度末の未処理残高か当月差異かを問題の指定で確かめ、差異勘定の消込みと売上原価の増減を対応させます。