Lesson 4

全部原価計算との固定費調整

このレッスンで学ぶこと

同じ製造・販売の実績でも、直接原価計算と全部原価計算で利益が異なることがあります。固定製造原価のうち、当期費用にした額と棚卸資産へ残した額の違いを確認します。

期首在庫がない場合、当期の固定製造原価は、全部原価計算では販売分を当期費用、期末在庫分を資産にする。直接原価計算では全額を当期費用にする。

期首在庫がない場合の、当期固定製造原価の扱いを比べます。

固定製造原価をいつ費用にするか

全部原価計算は、変動製造原価だけでなく固定製造原価も製品原価に含めます。未販売の製品に含まれる固定製造原価は、棚卸資産として次期へ繰り越されます。

直接原価計算は、当期の固定製造原価を全額当期費用にします。製品が未販売でも、その固定製造原価を翌期へ残しません。

方法 未販売製品の固定製造原価
全部原価計算 棚卸資産へ含めて次期へ繰り越す
直接原価計算 当期費用として処理する

ここで調整するのは固定製造原価です。固定販売費及び一般管理費を製品に含める調整ではありません。

期首と期末の固定製造原価を加減する

他に両方式の利益差の原因がない場合、次の関係が成り立ちます。

全部原価計算の営業利益=直接原価計算の営業利益+期末棚卸資産の固定製造原価−期首棚卸資産の固定製造原価

期末分を足すのは、全部原価計算ではその分を当期費用にせず資産へ残すためです。期首分を引くのは、前期から繰り越した固定製造原価が、当期の費用へ入る関係を調整するためです。

仕掛品もある場合は、製品だけでなく仕掛品に含まれる固定製造原価も棚卸資産の対象にします。

例題:繰越額から利益を調整する

直接原価計算の当期営業利益は10,000円であった。全部原価計算の期首棚卸資産に含まれる固定製造原価は2,000円、期末分は6,000円であった。これ以外に両方式の利益差の原因はなかった。

全部原価計算の営業利益を求めなさい。

解答と解説

全部原価計算の営業利益は10,000+6,000−2,000=14,000円です。

期末へ残る固定製造原価が期首より4,000円多いので、その分だけ全部原価計算の当期利益が大きくなります。期首分まで加算したり、期末分を逆に控除したりしません。

製造・販売の数値で確かめる

次の例では期首製品と期首・期末仕掛品はなく、当期に30個を製造し、20個を1個1,000円で販売したものとします。1個あたり変動製造原価は300円、固定製造原価は6,000円、固定販売費及び一般管理費は2,000円で、変動販売費及び一般管理費はなかったものとします。全部原価計算では固定製造原価を当期生産30個へ均等に配分し、原価差異はないものとします。

直接原価計算

売上高は20×1,000=20,000円、変動売上原価は20×300=6,000円です。固定製造原価6,000円を全額当期費用にします。

営業利益=20,000−6,000−6,000−2,000=6,000円

全部原価計算

製品1個へ含める固定製造原価は6,000÷30=200円です。1個の全部原価は変動300+固定200=500円なので、販売20個の売上原価は10,000円です。

営業利益=20,000−10,000−2,000=8,000円

利益差を在庫で確認する

月末には30−20=10個の製品が残っています。固定製造原価200×10=2,000円を全部原価計算では資産へ残すため、利益が直接原価計算より2,000円大きくなります。

直接利益6,000+期末固定製造原価2,000−期首0=全部利益8,000円

在庫が減る場合も式で判断する

期末棚卸資産の固定製造原価が期首より少なければ、全部原価計算の利益は直接原価計算より小さくなります。常に全部原価計算の方が利益が多いとは限りません。

売上や現金収入が増えたための利益差ではなく、固定製造原価をどの期間の費用にするかの違いです。実際の販売成績と混同せず、期首・期末の繰越額を確認します。

まとめ

直接原価計算の利益に期末棚卸資産の固定製造原価を加え、期首分を引くと、条件が同じ場合の全部原価計算の利益になります。固定製造原価と固定販売管理費、期首と期末を区別して調整します。