Lesson 5

欠損の補填と剰余金の振替

このレッスンで学ぶこと

損失が積み重なると、繰越利益剰余金が借方残高になることがあります。この欠損を、積立金やその他資本剰余金を使って補う処理を学びます。

別途積立金から繰越利益剰余金へ振り替えて欠損を補う。利益剰余金の合計は変わらない。

別途積立金を取り崩して欠損を全額補填する処分の効力が生じた場面です。新たな利益や入金は生じません。

借方残高が示す欠損

繰越利益剰余金は、利益が蓄積していれば貸方残高になります。反対に、累積した損失などが上回ると借方残高になり、マイナスの残高を示します。

欠損の補填は、このマイナスを、別の剰余金から振り替えて埋める処理です。借方残高を減らすには、繰越利益剰余金の貸方に記録します。

これは新しい売上や利益を生み出す取引ではありません。どの剰余金で損失を負担するかを変える内部振替です。

例題 別途積立金から補填する

繰越利益剰余金に8,000円の借方残高があり、別途積立金には10,000円の貸方残高があった。株主総会で別途積立金を取り崩して欠損を全額補填することが決議され、同日に効力が生じた。

欠損8,000円を埋めるため、別途積立金から同額を振り替えます。減らす別途積立金を借方、借方残高を消す繰越利益剰余金を貸方に記録します。

(単位:円)

借方科目
金額
貸方科目
金額
8,000
8,000

補填後の残高は、次のようになります。

科目 補填前 補填後
繰越利益剰余金 借方8,000円 0円
別途積立金 貸方10,000円 貸方2,000円

補填前の利益剰余金の合計は10,000−8,000=2,000円で、補填後も2,000円です。欠損が消えても、利益剰余金の合計が新たに増えたわけではありません。

その他資本剰余金を使える場合

資本剰余金と利益剰余金は、原則として区分を保ちます。利益を大きく見せるために、資本剰余金を自由に利益剰余金へ移すことはできません。

ただし、年度決算で利益剰余金全体が負の残高になっている場合は、その欠損をその他資本剰余金で補うことが認められます。期中に損失が出るたびに補うという意味ではありません。

準備金を減らす処理と欠損を補填する処理も区別します。ここでは、必要な手続を終え、すでにあるその他資本剰余金を使う処分の効力が生じた場合を考えます。

例題 年度決算の欠損を補う

年度決算で利益剰余金の全額が繰越利益剰余金の借方残高4,000円となり、その他資本剰余金には9,000円の貸方残高があった。この欠損をその他資本剰余金で全額補填する適法な処分の効力が生じた。

補填額は欠損と同じ4,000円です。その他資本剰余金の残高9,000円を全額移すのではありません。

減るその他資本剰余金を借方、欠損を消す繰越利益剰余金を貸方に記録します。

(単位:円)

借方科目
金額
貸方科目
金額
4,000
4,000

繰越利益剰余金はゼロ、その他資本剰余金は5,000円になります。株主資本の合計は変わらず、預金も増えません。

損失の計上と補填を分ける

当期の損失は、損益計算を通じて繰越利益剰余金に反映されます。その後に欠損を補填しても、発生した損失そのものを取り消すわけではありません。

補填仕訳には雑収入などの収益科目を使わず、振替元の剰余金と繰越利益剰余金を使います。

まとめ

  • 繰越利益剰余金の借方残高を減らすには、貸方に振替額を記録します
  • 欠損補填は純資産内の振替で、当期純利益や預金を増やしません
  • その他資本剰余金による補填では、年度決算の利益剰余金全体の負の残高を確認します