Lesson 5
複数の履行義務への取引価格の配分
このレッスンで学ぶこと
商品と保守サービスをまとめて販売しても、両方を同時に提供し終えるとは限りません。契約代金をそれぞれの履行義務へ配分し、提供済みの部分だけを収益にする方法を学びます。
別々の約束を見分ける
一つの契約に、商品を渡す約束と、保守サービスを提供する約束が含まれることがあります。顧客がそれぞれから利益を得られ、契約の中でも別個に識別できる場合は、別の履行義務として考えます。
以下の商品は保守サービスなしでも使用でき、商品と保守は別個の履行義務であるものとします。まず契約代金を二つに配分し、その後、それぞれの約束を果たした時期に収益を計上します。
独立販売価格の比率で配分する
独立販売価格は、商品やサービスを単独で顧客へ販売する場合の価格です。まとめ売りの契約代金は、それぞれの独立販売価格の比率で配分します。
商品の独立販売価格が180,000円、保守サービスが60,000円なら、合計は240,000円、比率は3対1です。まとめ売りの代金が216,000円の場合、商品の配分額は216,000×3/4=162,000円、保守は216,000×1/4=54,000円になります。
| 履行義務 | 独立販売価格 | 配分比率 | 契約代金の配分額 |
|---|---|---|---|
| 商品 | 180,000 | 3/4 | 162,000 |
| 保守サービス | 60,000 | 1/4 | 54,000 |
| 合計 | 240,000 | 1 | 216,000 |

商品だけに値引きを集めたり、商品数や契約の記載順で等分したりするのではなく、ここでは独立販売価格の比率を使っています。
配分と収益計上を分ける
配分額を求めただけでは、すべてがその日の収益になるわけではありません。商品は引き渡して支配が移転した時点、保守はサービス提供の進捗に応じて計上します。
商品引渡し時に契約代金216,000円の全額を普通預金で受け取り、保守はこれから提供するとします。商品分162,000円を売上、未提供の保守分54,000円を契約負債にします。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 216,000 | 売上 | 162,000 |
| 契約負債 | 54,000 |
保守を提供したときは、契約負債を借方で減らし、役務収益を貸方に記録します。同じ契約でも、商品と保守の収益計上時期を分けます。
例題
当社は、商品と12か月の保守サービスを216,000円で販売した。それぞれ別個の履行義務であり、独立販売価格は商品180,000円、保守60,000円であった。契約代金は独立販売価格の比率で配分する。
7月1日に商品を引き渡して顧客へ支配が移り、代金全額を普通預金で受け取った。保守は同日から翌年6月30日まで均等に提供する。経過月数が提供の進捗度を適切に表すものとし、3月31日の決算までの9か月分を決算で初めて収益へ振り替える。7月1日と決算時の仕訳を示し、決算後の契約負債残高を求めなさい。消費税は考慮しない。
解答と解説
独立販売価格の比率は180,000対60,000、すなわち3対1です。商品への配分額は162,000円、保守は54,000円です。
| 処理 | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 7月1日 | 普通預金 | 216,000 | 売上 | 162,000 |
| 契約負債 | 54,000 | |||
| 決算時 | 契約負債 | 40,500 | 役務収益 | 40,500 |
9か月分の保守収益は54,000÷12×9=40,500円です。決算後の契約負債は54,000−40,500=13,500円で、まだ提供していない3か月分を表します。
この契約の当期収益は、商品162,000円と保守40,500円の合計202,500円です。入金額216,000円と当期収益の差13,500円は、未提供の保守に対応しています。
まとめ
複数の履行義務がある契約では、契約代金を独立販売価格の比率で配分します。その後、各履行義務を果たした時期に収益を計上し、受領済みでも未提供の部分は契約負債として残します。