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吸収合併の会計処理~のれんと負ののれんの2パターン~

schedule2021-08-27

本日は、簿記2級の第1問の仕訳問題や第2問の株主資本等変動計算書の作成問題において頻出である「吸収合併」について記載しました。クイズも合わせてご覧下さい。

合併とは?

合併とは、2つ以上の会社が合体して1つの会社になることです。
合併には、「吸収合併」と「新設合併」がありますが、簿記2級で出題されるのは「吸収合併」なので、新設合併の説明は今回は省かせていただきます。

吸収合併とは?

吸収合併とは、合併した2つの会社の一方が存続し、他方が消滅する合併のことです。存続する会社のことを「合併会社」、消滅する会社を「被合併会社」といいます。

合併会社は、被合併会社の資産・負債を受け入れるとともに、対価として被合併会社に対して新たに株式を発行します。
これにより、被合併会社の株主は、新たに合併会社の株主になるのです。

吸収合併の会計処理

吸収合併の会計処理は以下の3ステップで行います。順番に見ていきましょう。

① 資産・負債の受け入れ

まず、被合併会社の資産と負債を時価で受け入れます。
これを「パーチェス法」といいます。
使用する勘定科目は問題文に与えられていますが、通常は「諸資産」と「諸負債」になります。

② 株式発行による資本の増加

合併の対価として、被合併会社の株主に対して新たに株式を発行します。
このとき、株式の発行価額を資本の増加として「資本金」や「資本準備金」とします。全額を資本金とする場合もあります。

③ のれんまたは負ののれん発生益の計上

受け入れた被合併会社の資産と負債の差額である受入純資産と増加する資本との差額を、「のれん」または「負ののれん発生益」とします。
借方差額(受入純資産額<増加資本)の場合は「のれん」を計上し、貸方差額(受入純資産額>増加資本)の場合は「負ののれん発生益」を計上します。
のれんは「無形固定資産」ですが、負ののれん発生益は「特別利益」であることも抑えましょう。

例題1

A社はB社を吸収合併し、B社の株主に対して株式10株を@100円で発行し、全額を資本金で処理した。なお、B社の諸資産は(簿価: 3,100円、時価: 3,000円)であり、諸負債は(簿価: 2,000円、時価: 2,100円)である。

まず、被合併会社であるB社の諸資産と諸負債を時価で受け入れます。誤って簿価で受け入れないようにしましょう。
よって、ここまでを仕訳すると

借方科目
金額
貸方科目
金額
諸資産
3,000
諸負債
2,100

続いて、増加する資本は
@100円×10株=1,000円
今回は、全額を資本金とするので、これを仕訳に加えると

借方科目
金額
貸方科目
金額
諸資産
3,000
諸負債
2,100
資本金
1,000

最後に、のれんまたは負ののれん発生益を計上します。
今回、受入純資産額: 900円(3,000円-2,100円)<増加する資本: 1,000円となり、借方差額になるので、のれんが100円計上されます。
よって、仕訳は以下のようになります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
諸資産
3,000
諸負債
2,100
のれん
100
資本金
1,000

仮に、例題1の諸資産の時価が3,200円だった場合はどうなるでしょう。
その場合、受入純資産額: 1,100円(3,200円-2,100円)>増加する資本: 1,000円となり、貸方差額になるので、負ののれん発生益が100円計上されます。
よって、以下のような仕訳になります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
諸資産
3,200
諸負債
2,100
資本金
1,000
負ののれん発生益
100

クイズ

問1

正しいものを1つ選びなさい。
① のれんはB/Sの固定資産の部、負ののれん発生益はP/Lの営業外収益に区分される。
② 吸収合併の際、被合併会社の資産及び負債は適正な帳簿価額によって受け入れる。
③ 吸収合併の際に増加する資本は、資本金以外にも資本準備金などがある。

①については、のれんがB/Sの固定資産の部に区分されるのは正しいです。しかし、負ののれん発生益はP/L上は営業外収益ではなく、特別利益となります。よって、×です。

②については、吸収合併の際、被合併会社の資産・負債は帳簿価額ではなく、時価で受け入れます。よって×です。

③については、増加する資本を全額資本金とすることもあれば、一部を資本金として残りを資本準備金とする場合もあります。よって、○です。

したがって、正解は、③ でした!