債権の貸倒れ~貸倒損失と貸倒引当金の2パターン~
本日は、売掛金や受取手形などの債権が貸し倒れた際の会計処理について詳しく見ていきます。クイズの解説も合わせてご覧下さい。
貸倒れって?
「貸倒れ」とは、売掛金などの債権が倒産などの理由で回収できなくなることです。債権が貸し倒れた時は、その実態が分かるように仕訳をする必要があります。
貸倒れの会計処理のポイントは、貸し倒れた売掛金などの債権がいつの時点で発生したのかです。具体的には、売掛金などの債権が「当期に発生したのか」、それとも「前期に発生したのか」によって会計処理が異なります。
それでは、例題と合わせて見ていきましょう。
当期に発生した債権の貸倒れ
当期に発生した債権が貸し倒れてしまった場合は、全額を貸倒損失として費用処理します。
前期に設定した貸倒引当金の残高がいくらあろうと、全額を貸倒損失とする点に注意です。なぜなら、貸倒引当金の残高は、当期発生分に対する引当金ではないからです。
当期販売分の商品に対する売掛金1,000円が貸し倒れた。
まず、売掛金が回収出来なくなったので、資産の減少として貸方に「売掛金」が来ます。売掛金は当期に発生しているので、貸方に来るのは「貸倒損失」です。
よって仕訳は以下のようになります。
借方科目 | 金額 |
貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒損失 | 1,000 | 売掛金 | 1,000 |
前期に発生した債権の貸倒れ
前期に発生した債権が貸し倒れてしまった場合は、貸倒引当金の残高があればそれを取り崩し、足りなかった分は貸倒損失となります。
当期に発生した場合と違って、今回は貸倒引当金を取り崩すことができます。前期に発生した債権が将来貸し倒れてしまう可能性を考慮して、前期決算日に貸倒引当金を設定しているからです。
前期販売分の商品に対する売掛金2,000円が貸倒れた。なお、貸倒引当金の残高は2,500円がある。
まず、売掛金が回収出来なくなったので、資産の減少として貸方に「売掛金」が来ます。売掛金は前期に発生したもので、かつ引当金の残高(2,500円)が貸し倒れた債権額(2,000円)よりも多いです。よって、貸し倒れた分は、全額貸倒引当金を取り崩すことができます。
よって、仕訳は以下のようになります。
借方科目 | 金額 |
貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 2,000 | 売掛金 | 2,000 |
今の例題で、貸倒引当金の残高が1,500円の場合の仕訳はどうなるでしょう。
貸倒引当金の残高が足りない場合は、貸倒損失として処理をします。
よって、仕訳は以下のようになります。
借方科目 | 金額 |
貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 1,500 | 売掛金 | 2,000 |
貸倒損失 | 500 |
クイズ
次の文章の正誤を判定しなさい。
「当期に販売した商品にかかる売掛金5,000円が貸し倒れた。なお、貸倒引当金の残高は6,000円である。」
これを仕訳すると、借方に来るのは貸倒引当金である。
当期に発生した売掛金が貸し倒れているので、全額を「貸倒損失」として処理します。よって、借方に来る科目は貸倒引当金ではありません。
したがって、正解は、× でした。
このときの仕訳は以下のようになります。
借方科目 | 金額 |
貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒損失 | 5,000 | 売掛金 | 5,000 |
貸倒引当金の残高の情報はダミーです。当期発生分の場合、貸倒引当金は取り崩せないので、注意しましょう。
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次の仕訳の正誤を判定しなさい。
「前期販売分の商品に対する売掛金5,000円が貸し倒れた。なお、貸倒引当金の残高は4,500円である。」
借方科目 | 金額 |
貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒損失 | 500 | 売掛金 | 5,000 |
貸倒引当金 | 4,500 |
前期販売分の商品に対する売掛金であるため、貸し倒れた時はまず「貸倒引当金」を取り崩します。それでも足りない場合は「貸倒損失」を計上します。
よって、仕訳は以下のようになります。
借方科目 | 金額 |
貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒損失 | 500 | 売掛金 | 5,000 |
貸倒引当金 | 4,500 |
したがって、正解は ○ でした。
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