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費用の繰り延べと前払費用~経過勘定の会計処理~

schedule2021-08-07

費用の繰り延べは簿記3級、簿記2級ともに決算整理仕訳で頻出です。以下に、費用の繰り延べの概念や会計処理、計算方法、そしてクイズの解説を記載しております。

費用の繰り延べ

費用の繰り延べ」とは、翌期の費用を当期に支払った場合に、翌期の費用を当期の費用から取り除くことです。
収益と費用が載るのは損益計算書であり、企業の一会計期間の経営成績を表す財務諸表です。つまり、当期分の収益及び費用が正確に損益計算書に記載されるように修正しなければならないのです。
よって、当期中に翌期分の費用を先に支払った場合は、決算時に決算整理仕訳として費用の繰り延べを行わなければなりません。

会計処理

費用の繰り延べの会計処理は、翌期分の費用を減少させて、新たに**「前払費用」勘定を用いて資産の増加**として処理します。
ここでは、家賃の前払いを例に見てみましょう。

例題

当社(会計期間×1年4月1日~×2年3月31日)は×1年8月1日に向こう1年分の家賃30,000円を現金で支払った。
(1) 支払い時(×1年8月1日)の仕訳をしなさい。
(2) 決算日(×2年3月31日)の仕訳をしなさい。
(3) 翌期首(×2年4月1日)の仕訳をしなさい。

(1) 支払い時は、前払費用勘定は使わず、支払家賃で処理します。
よって仕訳は以下のようになります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
支払家賃
30,000
現金
30,000

(2) 向こう1年分とは、×1年8月1日から×2年7月31日の12ヶ月分のことです。
よって、×2年4月1日から×2年8月1日までの4ヶ月間は、翌期に該当するため、決算時には費用の繰り延べをします。
翌期の分の家賃(前払家賃)は以下の式で出すことができます。

30,000円×4/12=10,000円

よって仕訳は以下のようになります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
前払費用(前払家賃)
10,000
支払家賃
10,000

(3) 翌期首になったら、前期末に行った決算整理仕訳の逆仕訳を行います。これを「再振替仕訳」といいます。
よって、仕訳は以下のようになります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
支払家賃
10,000
前払家賃
10,000

クイズ

問1

次の決算整理仕訳において、前払保険料はいくら計上されるか4つの中から選びなさい。
支払保険料12,000円は×0年8月1日に向こう1年分を前払いしたものである(会計期間は×0年1月1日〜×0年12月31日)。

(ア) 3,000円
(イ) 5,000円
(ウ) 7,000円
(エ) 9,000円

×0年8月1日に向こう1年分払った支払保険料12,000円のうち、翌期に該当するのは×1年1月1日から ×1年の8月1日の7ヶ月分です。
よって、前払保険料は以下の式で求められます。

12,000円×7/12=7,000円

よって、正解は、(ウ)となります。

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問2

次の決算整理仕訳の正誤を判定せよ。
「保険料は毎年同額を12月1日に12ヶ月分として支払っている。ただし、決算整理前残高試算表の金額は3,600円であり、決算日は3月31日である。」

借方科目
金額
貸方科目
金額
前払保険料
2,400
支払保険料
2,400

問題文より「毎年同額」とあります。この場合は注意が必要です。
保険料を毎年同額支払っているということは、前期末にも以下のような費用の繰り延べの処理を行っていますね。

借方科目
金額
貸方科目
金額
前払保険料
××
支払保険料
××

つまり、当期首には以下のような再振替仕訳を行っていることが分かります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
支払保険料
××
前払保険料
××

これから分かるように、再振替仕訳の分だけ当期の費用が増加しますね。

それでは、当期が×2年4月1日~×3年3月31日だと仮定して、計算で必要な期間について見ていきましょう。
翌期分は×3年4月1日~×3年12月1日までなので、分子に来るのは8ヶ月です。ここまでは普通です。
しかし、分母はどうでしょう。×2年12月1日から×3年12月1日までの12ヶ月としてしまったら不正解です。
なぜなら、先ほどいったように、前T/B残高の保険料3,600円の中には、期首(×2年4月1日)の再振替仕訳の分も含まれているからです。
よって、分子に来る期間は、×2年4月1日~×3年12月1日までの20ヶ月となります。
ゆえに、前払保険料は以下のように計算できます。

3,600円×8/20=1,440円

したがって、仕訳は以下のようになります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
前払保険料
1,440
支払保険料
1,440

よって、正解は × でした。

「毎年同額」というキーワードを見つけたら注意しましょう。何でもかんでも12ヶ月で割ればいい訳ではありません。
翌期の分が何ヶ月分なのかということと、前T/Bの金額が何ヶ月分の金額なのかということをしっかり問題文から読み取って計算しましょう。

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