全部原価計算と直接原価計算の違い~なぜ営業利益が違うのか~
2021-08-09
今回は、簿記2級の工業簿記の論点である「全部原価計算と直接原価計算の違い」についてまとめました。クイズの解説も合わせてご覧下さい。
全部原価計算
「全部原価計算」では、費用を売上原価と販管費に分けて営業利益を計算します。 具体的には、以下の式で求まります。
営業利益=売上高-売上原価-販管費
よって、全部原価計算では、変動費と固定費を分けずに計算しますので、売上原価や販管費には、変動費と固定費ともに含まれます。
販管費は、期間原価として当期発生額を全額損益計算書に計上します。
直接原価計算
一方、「直接原価計算」とは、費用を変動費と固定費に分けて営業利益を計算します。具体的には、以下の式で求まります。
営業利益=売上高-変動費-固定費
変動費は、変動売上原価と変動販売費から成ります。
ここで、売上高から変動製造原価を引いたものが「変動製造マージン」であり、変動製造マージンから変動販売費を引いたものが「貢献利益」となります。
クイズ
問1
次の文章の正誤を判定しなさい。
全部原価計算で算出された営業利益と直接原価計算で算出された営業利益は常に一致する。
営業利益に差が生じる原因を考える際に重要なポイントは「固定製造原価」です。
「直接原価計算」では、固定製造原価を期間原価として発生した期間に損益計算書へ全額計上します。
一方、「全部原価計算」では、いったん製品原価に算入し、製品を販売した分だけその期の売上原価として損益計算書に計上します。
まとめると、直接原価計算と全部原価計算の決定的な違いは、固定製造原価を期間原価とするかしないかの違いなのです。
したがって、全部原価計算と直接原価計算では、P/L上の営業利益が常に一致するわけではなく、差が出ることがあります。
よって、正解は ×です。
ただ、同じになる場合もありますので、注意が必要です。