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満期保有目的債券の会計処理~償却原価法(定額法)の適用~

schedule2021-11-02

満期保有目的債券とは?

満期保有目的債券とは、会社が満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券のことです。
満期まで保有することによって、利払日には利息を、満期日には元本を受け取ることができます。
売却を意図していないので、売買目的有価証券のような売却の仕訳や時価評価はありません。
また、満期保有目的債券は、取得原価をもって貸借対照表の投資その他の資産の区分に「満期保有目的債券」と表示します。

会計処理

満期保有目的債券の会計処理は3パターンあります。 それぞれ例題とともに見ていきましょう。

購入したとき

満期保有目的を購入したときは、取得原価を満期保有目的債券勘定(資産)で処理します。
取得原価とは、購入代価付随費用を加えた金額のことです。
購入代価は有価証券の本体価格であり、付随費用は証券会社に支払う手数料などのことです。

例題1

当社は、満期保有目的でA社社債(額面総額100,000円)を額面100円につき95円で購入し、代金は現金で支払った。

社債は1口2口と数えるので、社債の計算は通常、口数で行います。「額面100円につき」と書かれているので、額面総額を@100円で割ったものがこの社債の口数となります。
よって、購入口数は
100,000/100=1,000口
これを95円で購入したので、取得原価は以下のように求まります。
95円×1,000口=95,000円
よって、仕訳は以下のようになります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
満期保有目的債券
95,000
現金
95,000

利息を受けとったとき

利息を受け取ったとき、受け取った利息は有価証券利息勘定営業外収益)で処理をします。
また、簿記3級の現金のところで学んだように、期限が到来した公社債の利札は、現金の増加として処理します。

例題2

所有しているA社社債について、社債利札5,000円の期限が到来した。

期限が到来している公社債の利札を「現金」(資産)で処理するとともに、有価証券利息(収益)を計上します。
よって、仕訳は以下のようになります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
現金
5,000
有価証券利息
5,000

決算時

決算時、額面金額と取得原価の差額が金利を調整するために生じたもの(金利調整差額)であると認められた場合、償却原価法を適用します。
償却原価法を適用することで、最終的に「帳簿価額=額面金額」になります。 簿記2級では、この金利調整差額を社債の取得日から満期日までの間、毎年同額ずつ帳簿価額に加減する定額法が出題されます。
定額法による当期加減額は以下の式で求まります。

定額法による当期加減額

(額面金額-取得原価)×当期の所有月数/取得日から満期日までの月数

これにより求めた加減額を、満期保有目的債券(資産)の増加または減少として処理するとともに、相手科目は有価証券利息(収益)で処理します。

例題3

当期首(×1年4月1日)に95,000円で購入したA社社債(額面金額100,000円、満期保有目的債券、満期日は×6年3月31日)について、決算日(×2年3月31日)に必要な仕訳を行う。なお、額面金額と取得原価との差額は金利調整差額であると認められるため、償却原価法(定額法)を適用する。

定額法による当期加減額は以下のように求まります。

(100,000-95,000)×12/60=1,000

よって、この分だけ満期保有目的債券を増加させ、同時に有価証券利息を計上します。
したがって、仕訳は以下のようになります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
満期保有目的目的債券
1,000
有価証券利息
1,000

クイズ

問1

次の文の正誤を判定しなさい。

満期保有目的債券は、期末時の時価評価は行わず、貸借対照表の投資その他の資産に表示する。

満期保有目的債券は、原則として、取得原価をもって貸借対照表の投資その他の資産の区分に「満期保有目的債券」と表示します。
ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければなりません。
売却を意図していないので、売買目的有価証券のような売却の仕訳や時価評価はありません。
よって、正解は 〇 でした。

特に、償却原価法は第3問で頻出なので、計算できるようにしておきましょう。