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減価償却費の概算~定額法と定率法の2パターンの解法~

schedule2021-08-12

今回は「減価償却費の概算」についてです。この論点が載っているテキストはほとんどないですが、過去に出題実績がありますので、これを機にマスターしましょう。クイズも合わせてご覧ください。

減価償却費の概算とは

費用には突発的な取引が起きることが分かっても、正確な金額が分からない費用があります。しかし、金額が確定するまで何も処理を行わないと、最終的な損益が月次の段階と大きく異なってしまいます。
そこで、期首に1年間の発生金額を算出し、毎月分割して費用として計上します。

減価償却費が良い例です。
まず、1年間の減価償却額を算出し、これを12等分して、毎月の減価償却費として計上します。期中に資産の取得、売却、除却などの増減があると、当初の見積額と1年間の償却額が異なります。
そこで、決算時にこれらの差額を調整するのです。

以下の例題で定額法の場合と定率法の場合の計算方法を確認しましょう。

定額法の場合

例題1

当社(決算日3月31日)における建物(取得原価54,500円、耐用年数25年、残存価額ゼロ、定額法)の減価償却費の決算整理前残高は、4月から2月までの月次決算において、180円を概算額にて各月に計上したものであるが、減価償却費の年間確定額との差額を決算月で計上する。

まず、4月から2月までの11ヶ月間にわたって各月180円ずつ計上しているため、概算額は以下のようになります。

180円×11ヶ月=1,980円

これが減価償却費の決算整理前残高です。
そして、年間確定額は、いつも通り当期(1年分)の減価償却費を求めれば良いので、以下のようになります。

54,500円/25年=2,180円

概算額1,980円、年間確定額2,180円となり、年間確定額の方が200円多いので、この分を減価償却費として計上することで調整します。
よって、仕訳は以下のようになります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
減価償却費
200
建物減価償却累計額
200

定率法の場合

例題2

当社(決算日3月31日)における備品(取得原価5,600円、耐用年数8年、200%定率法)の減価償却費の決算整理前残高は、4月から2月までの月次決算において、90円を概算額にて各月に計上したものであるが、減価償却費の年間確定額との差額を決算月で計上する。
なお、備品減価償却累計額の決算整理前残高は2,390円である。

定率法は少し難しいです。
まず、4月から2月までの11ヶ月間にわたって各月90円ずつ計上しているため、概算額は以下のようになります。

90円×11ヶ月=990円

これが減価償却費の決算整理前残高です。
次に年間確定額を出します。耐用年数8年の200%定率法なので、償却率は 以下のように求まります。

(1/8)×200=25%

ここで、年間確定額を(5,600円ー2,390円)×0.25として計算してしまうと間違いになります。
なぜなら、備品減価償却累計額の決算整理前残高である2,390円の中には、11ヶ月分の見積計上額である990円が含まれているからです。
よって、2,390円ー990円=1,400円が期首減価償却累計額になるので、年間確定額は以下のようになります。

(5,600円ー1,400円)×0.25=1,050円

概算額990円、年間確定額1,050円となり、年間確定額の方が60円多いので、この分を減価償却費として計上することで調整します。
よって、仕訳は以下のようになります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
減価償却費
60
備品減価償却累計額
60

クイズ

問1

減価償却費の調整額は?
備品(取得原価960,000円、200%定率法、耐用年数10年)の減価償却費は概算額(1ヶ月あたり10,000円)をもって4月から2月まで毎月見積計上しているため、決算(3月末)で年間確定額との差額を調整する。なお、前T/Bの備品減価償却累計額は455,600円である。
(ア) 9,120 (イ) 12,880 (ウ) 14,600 (エ) 16,200

4月から2月までの11ヶ月間にわたって各月10,000円ずつ計上しているため、概算額は以下のようになります。

10,000円×11ヶ月=110,000円

これが減価償却費の決算整理前残高です。
次に年間確定額を出します。耐用年数10年の200%定率法なので、償却率は以下のように求められます。

(1/10)×200%=20%

備品減価償却累計額の決算整理前残高である455,600円の中には、11ヶ月分の見積計上額である110,000円が含まれています
よって、455,600円ー110,000円=345,600円が期首減価償却累計額になるので、年間確定額は以下のようになります。

(960,000円ー345,600円)×0.20=122,800円

概算額110,000円、年間確定額122,800円となり、年間確定額の方が12,880円多いので、この分を減価償却費として計上することで調整します。
仕訳は以下のようになります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
減価償却費
12,880
備品減価償却累計額
12,880

よって、正解は、(イ) でした。