売買目的有価証券~貸借対照表上の取り扱いと3つの会計処理~
今回は、有価証券の1つである「売買目的有価証券」について記載しました。クイズの解説も合わせてご覧下さい。
売買目的有価証券とは?
「売買目的有価証券」とは、時価の変動によって利益を得ることを目的に保有する有価証券をいいます。
「時価」とは、簡単に言えば現時点での市場における価格です。時価は常に一定というわけではなく、様々な要因で変動します。
当該有価証券を時価が高い時に売ることで、会社は利益を得ることが出来ます。
貸借対照表での取り扱い
売買目的有価証券は、時価をもって貸借対照表価額とします。
よって当該有価証券の期末時の時価が5,000円だった場合、貸借対照表に記載する金額は5,000円となります。
ここで、注意が必要です。仕訳をする時の科目は「売買目的有価証券」ですが、貸借対照表に記載する時の科目は「有価証券」になります。
また、売買目的有価証券は、短期で売買することを想定していますので、「流動資産」の区分になります。
売買目的有価証券の仕訳
ここからは、売買目的有価証券の購入、売却、期末時の時価評価の仕訳を見ていきます。
購入したとき
売買目的有価証券を購入したときは、購入代価に付随費用を加えた金額を取得原価とします。
ここで、「購入代価」とは有価証券の本体価格であり、「付随費用」は、証券会社に支払う手数料などのことです。
当社は売買目的でD社株式100株を1株@96円で購入し、代金は手数料500円とともに現金で支払った。
取得原価は、購入代価+付随費用なので、
@96×100株+500円=10,100円
現金で支払ったので現金という資産が減り、新たに売買目的有価証券という資産が増えます。
よって、仕訳は以下のようになります。
借方科目 | 金額 |
貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
売買目的有価証券 | 10,100 | 現金 | 10,100 |
売却したとき
売買目的有価証券を売却したときは、有価証券の帳簿価額と売却額の差額を有価証券売却損または有価証券売却益として処理します。
売買目的で保有する有価証券(帳簿価額10,000円)を11,000円で売却し、代金は当座預金に預け入れた。
帳簿価額よりも売却額の方が100円多いので、この場合は有価証券売却益(営業外収益)となります。
よって、仕訳は以下のようになります。
借方科目 | 金額 |
貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 11,000 | 売買目的有価証券 | 10,000 |
有価証券売却益 | 100 |
帳簿価額よりも売却額の方が少ない場合は、有価証券売却損(営業外費用)となります。
期末時の時価評価
売買目的有価証券の時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益とします。
つまり、決算時に帳簿価額を時価に評価替えし、その差額を有価証券評価損または有価証券評価益とします。
期末において、売買目的で保有するE社株式(帳簿価額10,000円)の時価は9,000円であった。
帳簿価額よりも時価の方が1,000円小さいため、この場合は有価証券評価損(営業外費用)となります。
よって、仕訳は以下のようになります。
借方科目 | 金額 |
貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
有価証券評価損 | 1,000 | 売買目的有価証券 | 1,000 |
帳簿価額よりも時価の方が大きい場合は、有価証券評価益(営業外収益)となります。
クイズ
次の文章の正誤を判定しなさい。
売買目的有価証券は、時価をもって貸借対照表価額とする。また、流動資産の区分に「売買目的有価証券」という科目で記載する。
売買目的有価証券は、時価をもって貸借対照表価額とし、流動資産の区分に記載するのは合っています。
しかし、表示する科目名は、「売買目的有価証券」ではなく「有価証券」です。
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