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Lesson6 貸倒引当金の設定

貸倒引当金の設定の概要

期末に売上債権の残高がある場合、翌期に貸倒れが生じる可能性があります。
そこで、会社はそれらの債権のうち、どれくらいが実際に貸倒れそうなのかを見積もります。
この見積額を貸倒見積高といい、通常は売上債権の期末残高に実績率を乗じて計算します。

貸倒見積高の計算式

貸倒見積高 = 売上債権の期末残高 × 実績率(%)

実績率は、過去の貸倒れの実績に基づき算定されるものですが、簿記試験の問題文では「2%」などと与えられます。

会計処理

決算整理時点ではまだ見積りの段階であり、実際に貸し倒れたわけではありません。
よって、見積りであることを示すために、借方は「貸倒引当金繰入」勘定(費用)、貸方は「貸倒引当金」勘定(資産の控除項目)とします。
また、決算整理前において、「貸倒引当金」勘定(資産の控除項目)の残高がある場合があります。この場合の決算整理仕訳は、当該残高と貸倒見積高の差額分についてのみ行います。
この計算方法を差額補充法といいます。

差額補充法による貸倒引当金繰入の算出式

貸倒引当金繰入 = 貸倒見積高 – 貸倒引当金の決算整理前残高

この式から分かるように、貸倒引当金の決算整理前残高が0であれば、貸倒見積高がそのまま貸倒引当金繰入になりますが、本番の試験では、貸倒引当金の決算整理前残高がある場合が多いです。

例題1

デビクレ株式会社は、決算日となり、売掛金の期末残高100,000円の2%を貸倒見積高として、差額補充法により貸倒引当金を設定する。ここで、貸倒引当金の決算整理前残高試算表の残高は1,500円であった。

貸倒見積高:100,000円 × 2%=2,000円
決算整理前残高:1,500円
よって、貸倒引当金繰入の金額は
2,000円ー1,500円=500円
借方は、「貸倒引当金繰入」(費用)であり、貸方は「貸倒引当金」(資産の控除項目)となります。
よって、仕訳は以下のようになります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
貸倒引当金繰入
500
貸倒引当金
500

貸倒時の処理(期中仕訳)

先ほどは決算整理仕訳を学びましたが、ここでは貸倒時の処理、すなわち期中に行う仕訳を見てみましょう。
Chapter4の「貸倒れ」のLessonを思い出してみてください。そこでは、当期に発生した売上債権が貸し倒れたときの会計処理のみを扱いました。
今回は、前期以前に発生した売上債権が貸し倒れた場合の会計処理についても見ていきましょう。

当期に発生した売上債権が貸し倒れたとき

当期に発生した債権が貸し倒れてしまった場合は、Chapter4の「貸倒れ」のLessonでやったように、全額を「貸倒損失」勘定を用いて費用の発生として処理します。

例題2

デビクレ株式会社の当期販売分の商品に対する売掛金1,000円が貸し倒れた。

まず、売掛金が回収出来なくなったので、資産の減少として貸方に「売掛金」が来ます。
売掛金は当期に発生しているので、貸方に来るのは「貸倒損失」です。
よって仕訳は以下のようになります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
貸倒損失
1,000
売掛金
1,000

前期に発生した売上債権が貸し倒れたとき

前期に発生した債権が貸し倒れてしまった場合は、まず「貸倒引当金」勘定(資産の控除項目)を取り崩し、それでも足りない分は「貸倒損失」勘定を用いて費用の発生として処理します。
当期に発生した場合と違って、貸倒引当金を取り崩すことができます。
なぜなら、前期に発生した債権が当期に貸し倒れてしまう可能性を考慮して、前期決算日に貸倒引当金を設定しているからです。

例題3

デビクレ株式会社の前期販売分の商品に対する売掛金2,000円が貸倒れた。なお、貸倒引当金の残高は2,500円ある。

まず、売掛金が回収出来なくなったので、資産の減少として貸方に「売掛金」が来ます。
売掛金は前期に発生したもので、かつ貸倒引当金の残高2,500円が貸し倒れた債権金額2,000円よりも多いです。
したがって、全額貸倒引当金を取り崩すことができます。
よって、仕訳は以下のようになります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
貸倒引当金
2,000
売掛金
2,000
例題4

デビクレ株式会社の前期販売分の商品に対する売掛金2,000円が貸倒れた。なお、貸倒引当金の残高は1,500円ある。

売掛金は前期に発生したもので、かつ貸倒引当金の残高1,500円が貸し倒れた債権金額2,000円よりも少ないです。
したがって、1,500円分は貸倒引当金を取り崩すことができますが、残りの500円については「貸倒損失」を計上します。
よって、仕訳は以下のようになります。

借方科目
金額
貸方科目
金額
貸倒引当金
1,500
売掛金
2,000
貸倒損失
500
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