Lesson 3
材料から仕掛品・製品・売上原価への流れ
このレッスンで学ぶこと
材料を買ったとき、製品が完成したとき、製品を販売したときでは、原価を記録する勘定が変わります。製造や販売がどこまで進んだかを確かめ、原価を次の勘定へ移す流れを学びます。

3級の復習
資産が増えるときは借方、減るときは貸方に記録します。費用の発生は借方、収益の発生は貸方です。製造業でもこの仕訳の基本は変わりません。
学習前に確認すること
製造原価には、材料費だけでなく労務費や経費も含まれます。製造間接費は、特定の製品に直接結び付けにくい製造原価をまとめ、作業時間などの基準で製品へ配賦するための勘定です。
製造の進み具合と勘定科目
| 状態 | 原価を記録する勘定 | 勘定の性質 |
|---|---|---|
| 購入し、まだ使っていない | 材料 | 原材料などの資産 |
| 製造に投入し、まだ完成していない | 仕掛品 | 製造途中の資産 |
| 完成したが、まだ販売していない | 製品 | 完成品の資産 |
| 製品を販売した | 売上原価 | 販売した製品の原価に当たる費用 |
直接材料費は材料から仕掛品へ移します。直接労務費なども仕掛品に集計し、製造間接費も配賦した金額を仕掛品へ加えます。完成した分を製品へ、販売した分を売上原価へ移します。
材料・仕掛品・製品の間の振替は、原価を二重に発生させる処理ではありません。移す先の資産を借方で増やし、移す元の資産を貸方で減らす処理です。
材料を購入して製造に使う
材料を掛けで購入すると、材料という資産が増えるので借方に記録します。材料代を後で支払う義務は、買掛金という負債を貸方に記録します。
材料を製造に使ったときは、材料を貸方で減らします。製品に直接結び付く使用分は、製造途中の原価を増やすため仕掛品の借方へ移します。工場共通の消耗品など、間接材料費に当たる使用分は製造間接費の借方に集めます。
労務費と製造間接費を仕掛品へ集める
賃金勘定は、賃金に関する労務費を集計するために使います。消費した労務費のうち直接労務費を仕掛品へ移すときは、仕掛品を借方に、賃金を貸方に記録します。間接労務費は製造間接費の借方へ集めます。
製造間接費を配賦するときは、製品側へ割り当てた原価が増えるので仕掛品の借方に記録します。同じ金額を製造間接費の貸方へ移します。本レッスンでは実際に集計した製造間接費の全額を配賦し、予定額との差額は生じないものとします。
完成と販売のときに原価を移す
完成した分は、仕掛品ではなく製品として管理します。よって、製品を借方で増やし、仕掛品を貸方で減らします。完成していない分は仕掛品に残ります。
当月の製造原価に月初仕掛品原価を加え、まだ完成していない月末仕掛品原価を差し引くと、完成した製品の原価になります。
完成品原価=月初仕掛品原価+当月製造原価−月末仕掛品原価
販売したときは、代金についての売上の仕訳と、原価についての仕訳を分けます。掛け販売なら、代金を受け取る権利である売掛金を借方に、収益である売上を貸方に記録します。
同時に、販売した製品の原価を費用にするため売上原価を借方に記録し、製品という資産を貸方で減らします。売上の仕訳には販売価格を、売上原価の仕訳には製造原価を用います。
例題
当社の月初の材料・仕掛品・製品の残高はいずれもなかった。当月の資料は次のとおりであった。消費税は考慮しない。
- 材料100,000円を掛けで購入した。
- 材料のうち70,000円を直接材料として、10,000円を間接材料として消費した。
- 当月消費した労務費40,000円は賃金勘定の借方に集計済みであり、そのうち30,000円が直接労務費、10,000円が間接労務費であった。
- 工場の修繕料20,000円は、製造間接費の借方に記帳済みであった。間接材料費・間接労務費・修繕料以外の製造間接費はなく、合計額を全額、当月の製造に配賦した。
- 当月に完成した製品の原価は110,000円であった。
- 原価80,000円の製品を135,000円で掛け販売した。
資料1~6について必要な原価の集計・振替と販売の仕訳を示し、月末の材料・仕掛品・製品の各残高を求めなさい。記帳済みの仕訳を重ねて示す必要はない。
解答と解説
材料の購入と消費
材料100,000円を購入して資産が増えます。その後、消費した合計80,000円を材料から減らし、直接材料費と間接材料費を別々の勘定へ移します。
| 処理 | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 購入 | 材料 | 100,000 | 買掛金 | 100,000 |
| 消費 | 仕掛品 | 70,000 | 材料 | 80,000 |
| 製造間接費 | 10,000 |
労務費の振替と製造間接費の配賦
賃金に集計した40,000円を、直接分30,000円と間接分10,000円に分けます。修繕料は記帳済みなので、ここでは重ねて計上しません。
製造間接費の配賦額は、間接材料費10,000+間接労務費10,000+修繕料20,000=40,000円です。
| 処理 | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 労務費の振替 | 仕掛品 | 30,000 | 賃金 | 40,000 |
| 製造間接費 | 10,000 | |||
| 間接費の配賦 | 仕掛品 | 40,000 | 製造間接費 | 40,000 |
これで仕掛品に集まった原価は、70,000+30,000+40,000=140,000円です。
完成と販売
完成した110,000円は製品へ移します。販売した製品については、代金135,000円と原価80,000円を区別します。
| 処理 | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 完成 | 製品 | 110,000 | 仕掛品 | 110,000 |
| 売上の計上 | 売掛金 | 135,000 | 売上 | 135,000 |
| 原価の振替 | 売上原価 | 80,000 | 製品 | 80,000 |
月末残高
| 勘定 | 計算 | 月末残高 |
|---|---|---|
| 材料 | 100,000−70,000−10,000 | 20,000円 |
| 仕掛品 | 70,000+30,000+40,000−110,000 | 30,000円 |
| 製品 | 110,000−80,000 | 30,000円 |
仕掛品に集計した140,000円は、仕掛品30,000円、製品30,000円、売上原価80,000円へ分かれています。売上135,000円は販売価格なので、この原価の合計には加えません。

仕掛品に集計した原価は、未完成・未販売・販売済みの各段階に分かれます。
仕訳を勘定へ移す
3級と同じく、仕訳の借方はその勘定の借方へ、貸方は貸方へ記入します。上の「仕掛品30,000/賃金30,000」なら、仕掛品の借方に30,000円です。摘要に相手勘定を書く形式では「賃金」と記入します。
上の例の仕掛品勘定は、次のようにつながります。
| 借方の摘要 | 金額 | 貸方の摘要 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 材料 | 70,000 | 製品 | 110,000 |
| 賃金 | 30,000 | 次月繰越 | 30,000 |
| 製造間接費 | 40,000 | ||
| 合計 | 140,000 | 合計 | 140,000 |
残った資産30,000円を「次月繰越」として貸方に置いて締め切り、翌月の借方へ繰り越します。この貸方表示は、負債や費用が増えたという意味ではありません。
まとめ
原価は製造・販売の進行に応じて、材料から仕掛品、製品、売上原価へ移ります。移した分だけ元の勘定を減らし、未使用・未完成・未販売の原価は、それぞれの資産に残します。