Lesson 4
正常仕損・減損の度外視法
このレッスンで学ぶこと
製造では、品質を満たさないものが出たり、加熱などで数量が減ったりすることがあります。通常の製造で生じると認められる範囲の仕損・減損について、度外視法で完成品と月末仕掛品へ原価を負担させる方法を学びます。
学習前に確認すること
総合原価計算では、直接材料費と加工費をそれぞれの完成品換算量で配分します。材料を始点で全量投入するなら材料費の換算量は実際数量と同じで、加工費は数量に加工進捗度を掛けて求めます。以下では加工費を直接材料費以外の製造原価とします。まず月初仕掛品のない1工程から学び、後半で月初仕掛品や回収価値がある場合へ進みます。
仕損と減損を区別する
仕損とは、製造したものが必要な品質などを満たさず、目的どおりの製品にならないことです。減損とは、加工中の蒸発などによって原料の数量が減少することです。ここでの減損は、固定資産の価値の低下を扱う減損会計とは別の意味です。
そのうち通常の製造で生じると認められるものを、正常仕損・正常減損といいます。基本例題1・2では、発生した数量はすべて正常であることが問題で与えられ、仕損品などの売却・回収価値はないものとします。
仕損や減損があるときは、実際数量の出入りにその数量も含めます。月初仕掛品がない場合、次の関係で確かめられます。
当月着手数量=完成品数量+月末仕掛品数量+仕損または減損の数量
度外視法でも原価を消してしまうわけではない
度外視法では、正常仕損・正常減損の原価を独立した費目として取り出さず、完成品などの原価に含めます。「度外視」という名前でも、発生した原価そのものがなくなるわけではありません。
誰にその原価を負担させるかは、発生点と月末仕掛品の進捗度によって決まります。まず、月末仕掛品が発生点まで進んでいるかを確かめます。
| 月末仕掛品の状態 | 正常仕損・正常減損の原価を負担するもの |
|---|---|
| 発生点にまだ達していない | 完成品だけ |
| 発生点を通過している | 完成品と月末仕掛品の両方 |
例題では、問題で示した発生点と月末仕掛品の進捗度を比較します。
終点で発生し月末仕掛品はそこまで進んでいない場合
仕損が工程の終点で発生し、月末仕掛品がまだ途中にある場合、月末仕掛品には正常仕損の原価を負担させません。
まず仕損分も含めた投入・加工の数量から単価を計算し、月末仕掛品を評価します。その月末仕掛品原価を総原価から差し引けば、正常仕損の原価を含む完成品原価が残ります。
この順番なら、仕損費を別に計算して振り替える必要はありません。
例題1
当社は同一の成形品を1工程で製造している。月初仕掛品はなく、当月着手1,000個のうち、完成品は800個、月末仕掛品は100個、正常仕損は100個であった。月末仕掛品の加工進捗度は50%であり、仕損は工程の終点でのみ発生するものとする。
直接材料は始点で全量投入し、加工費は均等に発生する。当月の直接材料費は240,000円、加工費は285,000円であった。仕損はすべて正常で、仕損品の評価額はなく、減損はなかった。
度外視法により、完成品総合原価と月末仕掛品原価を求めなさい。
解答と解説
月末仕掛品は50%までの加工なので、終点の仕損発生点に達していません。正常仕損の原価は完成品だけに負担させます。
実際数量は800+100+100=1,000個です。月末仕掛品を評価する単価の計算では、仕損した100個にも材料が投入され、終点まで加工されたことを反映します。
- 材料費の数量:800+100+100=1,000個
- 加工費の換算量:800+100×50%+100×100%=950個
- 材料費単価:240,000÷1,000=240円/個
- 加工費単価:285,000÷950=300円/個
月末仕掛品原価=100×240+50×300=39,000円
総原価は240,000+285,000=525,000円です。月末仕掛品39,000円を差し引き、残りを完成品へ負担させます。
完成品総合原価=525,000−39,000=486,000円
完成品を800×(240+300)だけで計算すると、正常仕損にかかった原価が完成品へ含まれません。この場合は、月末仕掛品を評価してから差し引く手順を使います。
月末仕掛品が発生点を通過している場合
完成品も月末仕掛品も発生点を通過している場合は、両方に正常仕損・正常減損の原価を負担させます。
この場合、配分先は完成品と月末仕掛品です。仕損・減損の数量を配分の分母から除き、残った完成品と月末仕掛品の換算量で総原価を割ります。実際数量の出入りを確認するときには、仕損・減損の数量を省きません。
例題2
当社は液状の製品を1工程で製造している。月初仕掛品はなく、当月着手1,100kgのうち、完成品は900kg、月末仕掛品は100kg、正常減損は100kgであった。減損は加工進捗度40%の地点でのみ発生し、月末仕掛品の加工進捗度は60%であった。
直接材料は始点で全量投入し、加工費は均等に発生する。当月の直接材料費は250,000円、加工費は240,000円であった。減損はすべて正常で、回収価値はなく、仕損はなかった。
度外視法により、完成品総合原価と月末仕掛品原価を求めなさい。
解答と解説
月末仕掛品は60%まで進んでいるため、40%の減損発生点を通過しています。完成品と月末仕掛品の両方に正常減損の原価を負担させます。
実際数量は900+100+100=1,100kgです。一方、原価を配分する分母は、正常減損100kgを除いた数量で求めます。
- 材料費の配分数量:900+100=1,000kg
- 加工費の配分換算量:900+100×60%=960kg
- 材料費単価:250,000÷1,000=250円/kg
- 加工費単価:240,000÷960=250円/kg
| 配分先 | 直接材料費 | 加工費 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 完成品 | 900×250=225,000円 | 900×250=225,000円 | 450,000円 |
| 月末仕掛品 | 100×250=25,000円 | 60×250=15,000円 | 40,000円 |
合計490,000円は、当月の直接材料費250,000円と加工費240,000円の合計に一致します。正常減損にかかった原価も、この490,000円の中に含まれています。

図は本文の2つの例題に対応します。損失の発生点を月末仕掛品が通過しているかで、負担させる対象を分けます。
月初仕掛品がある平均法につなげる
平均法では、材料費・加工費ごとに月初原価と当月原価を合わせます。そのうえで、正常仕損・減損の発生点から負担先を判断します。
例えば、月初仕掛品20個、当月着手120個、完成100個、月末仕掛品30個・加工進捗度60%、始点での正常減損10個とします。材料は始点投入、加工は均等に進み、回収価値はありません。月初と当月を合わせた材料費は26,000円、加工費は11,800円です。
数量は20+120=100+30+10で一致します。月末仕掛品も減損発生点を通過しているので、両者負担です。
- 材料費単価:26,000÷(100+30)=200円
- 加工費単価:11,800÷(100+30×60%)=100円
- 月末仕掛品:30×200+18×100=7,800円
- 完成品:26,000+11,800−7,800=30,000円
平均法なので、分子から月初原価を除いたり、分母から月初に済んだ加工量を引いたりしません。月初原価の扱いと正常減損の負担先を、別々に判断します。
仕損品に回収価値があるとき
仕損品を売却できるなど、評価額が示される場合は、その回収分まで良品に負担させません。評価額をどの原価から控除するかは問題の指定を確認します。
例えば、月初仕掛品なし、完成90個、月末仕掛品10個・進捗度50%、終点の正常仕損5個とします。材料は始点投入、加工は均等で、材料費21,000円、加工費10,000円、仕損品評価額1,000円を材料費から控除する条件です。
月末仕掛品は終点の仕損を負担しないため、控除前の単価で評価します。材料は21,000÷105=200円、加工は10,000÷(90+10×50%+5)=100円です。月末仕掛品は10×200+5×100=2,500円、完成品は31,000−2,500−1,000=27,500円となります。
この1,000円は回収できる価値です。正常仕損にかかった原価全額を、ここでさらに差し引くわけではありません。
まとめ
度外視法では、正常仕損・正常減損の原価を完成品などに含めます。月末仕掛品が発生点に達していなければ完成品だけ、通過していれば完成品と月末仕掛品の両方に負担させます。実際数量の一致と、配分する原価の一致を別々に確かめます。