Lesson 3
3級では、貸倒れに備えて貸倒引当金を設定する処理を学びました。会計上の費用が、その期の税金計算でも同じ額だけ認められるとは限りません。このレッスンでは、その時期のずれを税効果会計で調整する方法を学びます。
貸倒引当金を設定するときは、貸倒引当金繰入を費用として借方に、貸倒引当金を資産の控除項目として貸方に記録します。決算整理前の引当金残高がある場合は、必要額との差額を補充します。
会計では、当期の収益と費用を対応させて利益を計算します。一方、法人税等の計算では、税務上の収益に当たる「益金」と、税務上の費用に当たる「損金」を使います。税金計算の基礎になる金額が課税所得です。
例えば、会計上は貸倒引当金繰入を費用にしても、その一部が当期の損金に認められないことがあります。その部分は、会計上の利益に加算して課税所得を計算します。
| 貸倒引当金繰入のうち | 会計上の扱い | 税務上の扱い |
|---|---|---|
| 当期の損金に認められる部分 | 当期の費用 | 当期の損金 |
| 当期は認められず、将来認められる部分 | 当期の費用 | 当期の課税所得に加算し、将来減算 |
会計上の資産・負債の額と、税務上の資産・負債の額との間に生じ、将来解消する差額を一時差異といいます。貸倒引当金では、資産から差し引く額が会計と税務で異なるため、一時差異が生じます。
その差額が解消するときに課税所得を減らすものが、将来減算一時差異です。将来の税負担を減らす効果を、「繰延税金資産」勘定を用いて資産として計上します。一方、将来も損金に算入されない永久差異は、税効果会計の対象にはなりません。
このレッスンの条件では、繰延税金資産の期末残高は「将来減算一時差異の期末残高 × 法定実効税率」で計算します。繰延税金資産の回収可能性の判断は扱わず、全額計上できるものとします。
税効果会計は、税金費用を適切な期間に配分する手続です。これを仕訳しても、当期に納める税額そのものは変わりません。
当社の当期の税引前当期純利益は480,000円であった。この利益は、貸倒引当金繰入90,000円を費用として差し引いた後の金額である。貸倒引当金の決算整理仕訳はすでに行っていた。当期中の貸倒れによる取崩しや戻入れはなく、貸倒引当金の期末残高は90,000円であった。貸倒引当金の期首残高は0円であり、当期繰入額のうち税務上の損金に算入できる額は30,000円であった。
残額は将来の損金に算入される一時差異であり、ほかに会計と税務の差異はない。法定実効税率は当期・将来とも30%とし、繰延税金資産は全額計上できるものとする。期首の繰延税金資産は0円であり、中間納付は行っていない。
課税所得と法人税等の額を求め、法人税等および税効果会計の決算仕訳を示しなさい。なお、ここでは課税所得に30%を乗じて法人税等を計算し、勘定科目は「法人税等」「未払法人税等」「繰延税金資産」「法人税等調整額」を用いる。
当期に損金に算入できない額は、90,000−30,000=60,000円です。会計ではすでに費用にしているため、課税所得の計算では、この60,000円を加算します。
| 計算項目 | 計算 | 金額 円 |
|---|---|---|
| 税引前当期純利益 | 問題文の金額 | 480,000 |
| 課税所得への加算額 | 90,000−30,000 | 60,000 |
| 課税所得 | 480,000+60,000 | 540,000 |
| 法人税等 | 540,000×30% | 162,000 |
当期の法人税等という費用が発生するため、借方に「法人税等」を記録します。まだ納付していない税額は負債となるため、貸方は「未払法人税等」です。よって、仕訳は以下のようになります。
(単位:円)
借方科目 | 金額 |
貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
法人税等 | 162,000 | 未払法人税等 | 162,000 |
将来減算一時差異60,000円に30%を乗じると、繰延税金資産は18,000円です。
まず、将来の税負担を減らす効果を資産として計上するため、借方に「繰延税金資産」を記録します。また、当期の税金費用を減らすため、貸方に「法人税等調整額」を記録します。よって、仕訳は以下のようになります。
(単位:円)
借方科目 | 金額 |
貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
繰延税金資産 | 18,000 | 法人税等調整額 | 18,000 |
調整後の税金費用は162,000−18,000=144,000円で、480,000×30%と一致します。未払法人税等は162,000円のままであり、税効果会計の仕訳によって納付額が144,000円になるわけではありません。税務上の限度額が30,000円でも、会計上の貸倒引当金90,000円を30,000円へ減らすわけではありません。
例題1の翌期に、前期末の将来減算一時差異60,000円のうち40,000円が解消した。新たな一時差異は発生せず、期末の将来減算一時差異は20,000円となった。法定実効税率は30%のままであり、繰延税金資産は全額計上できるものとする。税効果会計の決算仕訳のみを示しなさい。
期末に必要な繰延税金資産は20,000×30%=6,000円です。前期末に計上した18,000円が残っているため、差額の12,000円を取り崩します。
| 時点 | 一時差異 円 | 繰延税金資産 円 |
|---|---|---|
| 前期末 | 60,000 | 18,000 |
| 当期中に解消した分 | △40,000 | △12,000 |
| 当期末 | 20,000 | 6,000 |
将来の税負担を減らす効果が12,000円分なくなるため、資産の減少として「繰延税金資産」勘定を貸方に記録します。また、当期の税金費用を増やすため、「法人税等調整額」勘定を借方に記録します。よって、仕訳は以下のようになります。
(単位:円)
借方科目 | 金額 |
貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
法人税等調整額 | 12,000 | 繰延税金資産 | 12,000 |
期末残高6,000円をそのまま仕訳するのではなく、すでにある残高18,000円との差額を仕訳する点に注意しましょう。
このレッスンは、2027年3月31日までの試験範囲に対応しています。
このレッスンでは、貸倒引当金に係る将来減算一時差異の発生・一部解消を扱います。減価償却、その他有価証券、繰延税金負債、税率変更は扱いません。
問題中の30%や損金算入額は学習用の条件であり、実際の会社の税率・限度額を示しません。