Lesson 6
株式を対価とする吸収合併
このレッスンで学ぶこと
吸収合併の対価として、自社の新株を交付する場合を扱います。受け入れる資産・負債、のれん、資本金・資本剰余金の増加を一つの仕訳へまとめ、株主資本の変動にもつなげます。

A社が取得企業となり、新株だけを対価とする吸収合併です。新株はB社の株主へ交付します。
3級の復習
株式を発行して出資を受けると、資本金などの純資産が増えます。株主からの出資は、商品の販売による売上とは区別します。
新株を誰へ渡し、何を受け入れるか
吸収合併では、一方の会社が存続し、消滅する会社の資産・負債を引き継ぎます。新株を対価とする場合、その株式は消滅会社の株主へ交付します。
以下では、取得に該当し、存続会社A社が取得企業となる吸収合併を扱います。受け入れる資産・負債と取得原価の配分は適切に決定され、増加する資本金・資本剰余金の内訳も適法に定められているものとします。
| 確認するもの | A社での記録 |
|---|---|
| 受け入れる資産 | 資産の増加として借方 |
| 引き受ける負債 | 負債の増加として貸方 |
| 新株の交付に対応する資本 | 指定された資本金・資本準備金・その他資本剰余金の増加として貸方 |
| 取得対価と受入純資産の差額 | 条件に応じてのれんなどを計上 |
新株を交付するだけなので、その交付自体で現金や預金を受け入れたり、支払ったりするわけではありません。
資産・負債の純額と株式対価を比べる
取得企業が受け入れる資産と負債は、取得日における時価を基礎に計上します。のれんは、適切に算定した取得対価が、受け入れた資産・負債の純額を上回る部分です。
受入純資産=受入資産の時価−引受負債の時価
のれん=取得対価−受入純資産(取得対価が上回る場合)
株式対価の額だけを見て、受け入れる資産の合計額と比べないようにします。比較するのは、負債も差し引いた純額です。
例題 株式対価の合併仕訳
A社を取得企業とする吸収合併の効力が生じ、A社はB社の建物(時価15,000円)と借入金(時価6,000円)を引き継いだ。取得対価は、B社の株主へ交付するA社の新株のみで、時価総額は12,000円である。資本金を9,000円、資本準備金を3,000円増やすことが適法に決定されている。
識別可能な資産・負債はこの二つだけで、取得原価の配分は適切である。共通支配下の取引ではなく、取得関連費用・税効果は考慮しない。A社の個別帳簿に記録する仕訳を示しなさい。
受入純資産は15,000−6,000=9,000円です。取得対価12,000円がこれを3,000円上回るため、のれん3,000円を計上します。
建物15,000円とのれん3,000円は資産の増加なので借方、引き受ける借入金6,000円は負債の増加なので貸方です。新株の交付による資本金9,000円と資本準備金3,000円の増加も貸方へ記録します。
(単位:円)
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 建物 | 15,000 | 借入金 | 6,000 |
| のれん | 3,000 | 資本金 | 9,000 |
| 資本準備金 | 3,000 |
借方・貸方の合計は18,000円で一致します。資本金・資本準備金の増加額は問題の指定に従い、消滅するB社の資本金や利益剰余金をそのまま足すのではありません。
その他資本剰余金へ配分する場合
合併による資本の増加先は、資本金と資本準備金だけとは限りません。その他資本剰余金への配分が指定される場合もあります。
上の例の取得対価12,000円について、資本金7,000円、資本準備金3,000円、その他資本剰余金2,000円を増加させる指定なら、貸方の資本の部分をこの三つに分けます。受入資産・負債と、のれん3,000円は変わりません。
株主資本等変動計算書でも、指定された各項目の列に増加額を記入します。株主資本全体の増加は、7,000+3,000+2,000=12,000円です。
株主資本の変動へつなぐ
合併によって増えた資本金・資本準備金は、株主資本等変動計算書でも各項目の増加として示します。新株の交付額を売上や当期純利益へ加える処理ではありません。
上のA社の合併直前残高が、資本金20,000円、資本準備金4,000円、繰越利益剰余金6,000円で、他の変動がなかったとする。
(単位:円)
| 項目 | 合併直前 | 合併による増加 | 合併直後 |
|---|---|---|---|
| 資本金 | 20,000 | 9,000 | 29,000 |
| 資本準備金 | 4,000 | 3,000 | 7,000 |
| 繰越利益剰余金 | 6,000 | 0 | 6,000 |
| 株主資本合計 | 30,000 | 12,000 | 42,000 |
株主資本の増加12,000円は、資産の増加18,000円から負債の増加6,000円を差し引いた額とも一致します。のれん3,000円を計上したこと自体で、繰越利益剰余金が増えるわけではありません。
株式取得による連結とは区別する
他社の株式を取得して子会社にする取引では、親会社の個別帳簿には子会社株式を記録し、資本との相殺は連結上で行います。
この例の吸収合併では、B社が消滅し、A社が資産・負債を引き継ぎます。そのため、A社の個別帳簿で受入資産・負債とのれんを記録します。新株を交付するという言葉だけで、子会社株式を借方に置かないようにします。
まとめ
- 株式を対価とする吸収合併では、消滅会社の株主へ自社の新株を交付します
- 受入資産・負債の純額と取得対価を比べ、指定された資本金・資本剰余金の増加と合わせて記帳します
- 資本の増加は、株主資本等変動計算書の対応する項目へ反映します
- 合併の個別仕訳と、子会社株式取得に伴う連結修正を区別します