Lesson 3
棚卸減耗損と商品評価損
このレッスンで学ぶこと
帳簿では商品が残っていても、実際に数えると不足していることがあります。また、商品は残っていても、以前の原価を回収できる値段では売れなくなることがあります。数量が減った損失と、残った商品の価値が下がった損失を分けて考えます。
3級の復習
三分法では、期首商品棚卸高+当期商品仕入高−期末商品棚卸高によって売上原価を求めます。期末に残った商品は「繰越商品」という資産です。
このレッスンでは三分法を使います。期首商品と期末商品の振替は、互いに相殺せず、それぞれの仕訳として示します。販売のつど商品を減らす売上原価対立法とは、使う勘定を区別します。
数量の不足は棚卸減耗損
帳簿上の数量を「帳簿数量」、実際に数えた数量を「実地数量」といいます。破損や紛失などで実地数量が帳簿数量より少ないときは、不足した商品の原価を資産から外します。その損失が「棚卸減耗損」です。
棚卸減耗損 = (帳簿数量−実地数量)×原価単価
損失が発生したため棚卸減耗損を借方に記入し、なくなった商品の分だけ繰越商品を貸方で減らします。
残った商品の値下がりは商品評価損
販売できる見込額が下がり、商品の原価を回収できなくなった場合には、残っている商品の帳簿価額を引き下げます。通常の販売目的で保有する商品の収益性低下による損失を「商品評価損」として計上します。
ここで使う「正味売却価額」は、販売見込額から、販売までに必要な追加の製造原価や販売のための直接経費を差し引いた金額です。問題で正味売却価額が与えられている場合、その金額を使います。
商品評価損 = 実地数量×(原価単価−1個当たりの正味売却価額)
この式は、正味売却価額が原価単価より低い場合の式です。なくなった商品をもう一度評価しないように、帳簿数量ではなく実地数量を使います。商品評価損を借方、繰越商品の減少を貸方に記録します。
例題
当社は商品売買を三分法で記帳している。決算日の商品資料は次のとおりであり、期首商品棚卸高を仕入勘定へ振り替え、期末帳簿棚卸高を繰越商品勘定へ振り替える処理は済んでいた。棚卸減耗損と商品評価損は未処理である。
| 項目 | 金額・数量 |
|---|---|
| 期首商品棚卸高 | 36,000円 |
| 当期商品仕入高 | 360,000円 |
| 期末帳簿数量 | 250個 |
| 期末実地数量 | 238個 |
| 原価単価 | 900円/個 |
| 正味売却価額 | 830円/個 |
商品は通常の販売目的で保有しており、棚卸減耗は正常な範囲のものであった。商品評価損は収益性の低下によるもので、両方の損失を売上原価に含めるため仕入勘定へ振り替える。棚卸減耗損、商品評価損、決算後の商品残高および売上原価を求め、必要な追加仕訳を示しなさい。
解答と解説
数量の不足は250−238=12個です。なくなった12個の原価を先に計算します。
- 棚卸減耗損:12×900=10,800円
- 商品評価損:残った238×(900−830)=16,660円
- 決算後の商品残高:238×830=197,540円
帳簿上の商品の金額250×900=225,000円から、二つの損失を引いても、225,000−10,800−16,660=197,540円になります。
以下は、商品の金額を減らす処理と、売上原価へ含める処理を、段階に分けて示しています。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 棚卸減耗損 | 10,800 | 繰越商品 | 27,460 |
| 商品評価損 | 16,660 |
借方では数量の損失と評価の損失を分け、貸方では繰越商品の減少額を10,800+16,660=27,460円にまとめます。
次に、問題の指示に従い二つの損失を仕入勘定へ振り替えます。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 27,460 | 棚卸減耗損 | 10,800 |
| 商品評価損 | 16,660 |
これらを一つの追加仕訳にまとめる場合は、棚卸減耗損と商品評価損が相殺され、借方「仕入」27,460円、貸方「繰越商品」27,460円となります。
通常の売上原価は36,000+360,000−225,000=171,000円でした。損失を含めた売上原価は171,000+10,800+16,660=198,460円になります。
売上原価198,460円と決算後の商品197,540円を合計すると396,000円になり、期首商品36,000円と当期仕入360,000円の合計に一致します。
損失の区分と表示
この例題では、正常な棚卸減耗と通常の商品評価損を売上原価に含める条件を与えています。「原価性がない棚卸減耗損」と指定された場合は、売上原価へ含めず、問題の指定や答案の表示欄に従って別の費用・損失にします。
上の例で棚卸減耗損10,800円だけに原価性がない条件なら、仕入へ振り替えるのは商品評価損16,660円だけです。売上原価は171,000+16,660=187,660円となり、棚卸減耗損10,800円は別に残します。商品を減らす金額は変わらないため、期末の商品残高は197,540円のままです。
また、繰越商品を減らす処理と、すでに計上した損失を売上原価に含めるための振替は別です。後者の振替で、商品をもう一度減らさないようにします。

まとめ
棚卸減耗損は不足数量に原価単価を掛け、商品評価損は残った実地数量に単価の低下額を掛けます。どちらも商品の資産額を減らしますが、同じ数量を二重に損失へ含めないことが大切です。