Lesson 1

賃金の支払額と消費額

このレッスンで学ぶこと

工場で今月働いた分の賃金と、今月支払った賃金は、必ずしも一致しません。支払日ではなく、いつ働いた分かを確かめて、当月の労務費を求めます。

今月の労働に対する賃金を今月の原価に計上し、翌月に普通預金から支払う流れ

3級の復習

給料から所得税などを差し引いて支払うと、差し引いた分は会社がいったん預かる負債です。また、当月分をまだ支払っていなければ、未払費用を計上します。給料と経過勘定で確認できます。

労務費は「働いてもらった分」の原価

労務費は、製造のために人の労働を使うことで生じる原価です。工場の賃金だけでなく、工場事務員の給料や工場従業員に係る会社負担の社会保険料なども含みます。販売部門の給料は販売費であり、製造原価には含めません。

種類 例 製品への集め方
直接労務費 直接工が特定製品を加工・組立てした時間の賃金 仕掛品へ直接集める
間接労務費 間接工の賃金、工場事務員の給料、工場従業員に係る会社負担の社会保険料 製造間接費へ集める

直接工は製品の加工・組立てなどを担当する人、間接工は運搬や保全などを担当する人です。直接工であっても、工場全体の清掃など、特定製品に結び付かない仕事の賃金は間接労務費になります。人の呼び名だけで、すべてを直接費にするわけではありません。

支払総額と手取額を分ける

賃金の支払総額は、従業員へ渡す手取額と、所得税などの預り金を合わせた金額です。預り金を差し引いても、従業員が働いた対価自体が減るわけではありません。

例えば、工場の賃金の支払総額が100,000円で、所得税等10,000円を預かり、残りを普通預金から振り込んだとします。賃金勘定の借方には総額100,000円を記録します。普通預金は手取額90,000円だけ減り、預り金という負債が10,000円増えます。

借方科目 金額 貸方科目 金額
賃金 100,000 普通預金 90,000
預り金 10,000

金額の単位は円です。ここでの預り金は従業員負担分などを預かった額であり、会社が別に負担する社会保険料とは区別します。

当月の消費額へ直す

当月の賃金消費額は、当月に働いてもらった分の原価です。賃金の締日と原価計算の月末が違うと、支払総額には前月に働いた分が含まれ、当月に働いた一部は翌月払いになります。

賃金の前払いがない場合、当月の消費額は次のように求めます。

当月賃金消費額=当月支払総額−前月末未払賃金+当月末未払賃金

前月末の未払分は、当月に支払っても前月の原価なので引きます。当月末の未払分は、支払いが翌月でも当月の原価なので足します。手取額ではなく、控除前の支払総額から計算します。

賃金台帳で支払総額と控除額を、出勤記録や作業票で働いた期間・時間・作業内容を確認します。支払いの記録だけでは、どの月・どの製品の原価かまでは分かりません。

例題:月をまたぐ賃金

当月の工場賃金の支払総額は100,000円、前月末未払賃金は20,000円、当月末未払賃金は30,000円であった。前月末未払額は当月の支払総額に含まれ、賃金の前払いはなかった。当月消費額のうち直接労務費は80,000円、残りは間接労務費であった。

当月の賃金消費額を求め、その消費を記帳する仕訳を示しなさい。

解答と解説

当月賃金消費額は100,000−20,000+30,000=110,000円です。間接労務費は110,000−80,000=30,000円となります。

製品に直接結び付く80,000円は仕掛品の借方へ、工場全体に関わる30,000円は製造間接費の借方へ集めます。集計した賃金をそれぞれの原価へ移すため、賃金の貸方へ合計110,000円を記録します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
仕掛品 80,000 賃金 110,000
製造間接費 30,000

未払賃金の記帳

未払賃金は支払義務なので、ここでは未払費用勘定を使います。前月末に「賃金20,000/未払費用20,000」を記帳している場合、当月初に逆仕訳をしてから、当月末の未払額を改めて計上します。

時点 借方科目 金額 貸方科目 金額
当月初の再振替 未払費用 20,000 賃金 20,000
当月末の未払計上 賃金 30,000 未払費用 30,000

当月初は前月の未払計上を取り消すため、負債の未払費用を借方へ、賃金を貸方へ記録します。当月末は未払いの当月原価を加えるため、賃金を借方へ、負債の未払費用を貸方へ記録します。

賃金勘定では、支払100,000円と月末未払30,000円の合計130,000円に対し、再振替20,000円と消費110,000円の合計も130,000円になります。支払い、期間の調整、消費の振替を分けて記録すると、二重計上を防げます。

まとめ

賃金の手取額と支払総額を分け、前月末・当月末の未払分を調整して当月の消費額を求めます。製品に直接結び付く分は仕掛品へ、間接的な分は製造間接費へ集めます。