Lesson 8
月次の見越繰延と再振替
このレッスンで学ぶこと
毎月、見越しや繰延べを行い、翌月初めに再振替する場合を考えます。月末に必要な資産・負債の残高を整え、年度累計額と当月だけの損益をつなぎます。

毎月初めに前月末の見越繰延を再振替する方式です。当月損益は、整理後の年度累計額の差から求めます。
3級の復習
前払費用はまだ当期の費用になっていない支払額、未収収益は当期に発生した未回収の収益です。再振替は、前の整理仕訳と借方・貸方を反対にして戻す処理です。
月次整理後の累計額を比べる
月次決算では、月ごとの損益を確かめるために、期間に対応する収益・費用や資産・負債を整理します。収益・費用の勘定を年次決算まで締め切らず、年度累計で記録する方法では、当月だけの金額を累計額と区別します。
当月の収益・費用=当月末の整理後累計額−前月末の整理後累計額
両月とも、同じ基準で必要な整理を済ませた金額を使います。商品の月次整理では、三分法による月次の売上原価と損益も同じ累計と当月の区別を扱っています。
ここでは、前月末の見越し・繰延べを翌月初めに再振替する方式で確認します。
保険料の繰延べと翌月の再振替
当社の会計年度は4月1日から翌年3月31日までである。4月1日に当期1年分の保険料24,000円を支払い、全額を支払保険料に記帳した。保険料は毎月均等に発生する。毎月末に未経過分を繰り延べ、翌月初めにその全額を再振替する。収益・費用は年度累計で記録し、他の保険料取引はない。
4月末に未経過分を資産へ移す
1か月分の保険料は24,000÷12=2,000円です。4月末に残る11か月分22,000円は、まだ費用になっていないので前払保険料という資産へ移します。
資産の増加として前払保険料を借方、費用の減少として支払保険料を貸方に記録します。
(単位:円)
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前払保険料 | 22,000 | 支払保険料 | 22,000 |
4月末の支払保険料残高は24,000−22,000=2,000円です。
5月初めに再振替する
5月1日には、前月末の繰延べを逆仕訳で戻します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払保険料 | 22,000 | 前払保険料 | 22,000 |
前払保険料はゼロになり、支払保険料の残高はいったん24,000円へ戻ります。5月に保険料24,000円が発生したという意味ではありません。
5月末に残りの10か月分を繰り延べる
5月末の未経過分は、6月から翌年3月までの10か月分です。2,000×10=20,000円を資産へ移します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前払保険料 | 20,000 | 支払保険料 | 20,000 |
5月末の整理後の支払保険料は24,000−20,000=4,000円です。これは4月・5月の累計です。
| 求める額 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 5月末の累計費用 | 24,000−20,000 | 4,000 |
| 5月だけの費用 | 4,000−4月末累計2,000 | 2,000 |
「月末の仕訳額20,000円」「年度累計費用4,000円」「当月費用2,000円」は、それぞれ意味が違います。
未収利息も再振替後の残高から整理する
貸付金の当期分の利息は2,400円で毎月均等に発生し、3月末現在も全額未収である。会計年度は4月1日から翌年3月31日までで、2月末に累計未収利息2,200円を計上し、3月1日に全額を再振替した。他の利息取引はない。
1か月分の収益は200円です。しかし、3月末に必要な未収利息は、未回収の当期分全体2,400円です。
3月1日の再振替は、受取利息を借方、未収利息を貸方にした2,200円でした。そのため、3月末の整理前では未収利息も受取利息もゼロです。
3月末は、資産の増加として未収利息2,400円を借方に、収益の増加として受取利息2,400円を貸方に記録します。
(単位:円)
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未収利息 | 2,400 | 受取利息 | 2,400 |
整理後の累計収益2,400円から、2月末の累計収益2,200円を引くと、3月だけの収益は200円です。再振替で前月分が戻されているため、3月末の見越仕訳を当月分200円だけにすると、必要な未収利息が足りなくなります。
年次決算で同じ処理を重ねない
3月末に見越し・繰延べなどを正しく計上済みなら、その整理後残高を年次決算にも使います。同じ額を年次決算だからと追加すると二重計上になります。
保険料の例では、2月末の前払保険料2,000円を3月1日に再振替すると、支払保険料は年間24,000円、前払保険料はゼロになります。3月末には未経過分がないため、同じ保険契約について繰延べの追加仕訳はありません。
再振替をしない方式や、月次整理が一部未処理の場合は、現在の帳簿残高が異なります。仕訳の形だけを覚えず、何が記帳済みで、いくらを残す必要があるかから調整します。
まとめ
- 月初に再振替した額も、月末の整理前残高へ反映されています
- 月末に残す前払・未収などの額と、その月だけの費用・収益を区別します
- 当月損益は、同じ基準で整理した年度累計額の差から求めます
- 月次で処理済みの整理を年次決算で重ねず、必要な差額だけを調整します