Lesson 14
製造業の決算整理と財務諸表のつながり
このレッスンで学ぶこと
製造業の決算では、材料の購入額や賃金の支払額を、そのまま製造原価にするとは限りません。必要な決算整理を反映し、製造原価報告書から損益計算書・貸借対照表へつなげます。
先に学ぶ:原価の流れ・賃金の支払額と消費額・製造間接費

工場賃金の当期支払額に前期末の未払分が含まれ、当期末にも未払分がある場合の期間調整です。
3級の復習
未払費用は当期に発生した費用として加え、前払費用は当期の費用から除きます。また、まだ販売していない在庫は、売上原価ではなく資産として残します。
まず製造に使った当期分へ直す
製造原価報告書は、当期に完成した製品の原価を求めるための資料です。材料費・労務費・経費を当期の消費額へそろえ、製造中の仕掛品を調整します。
ここでは原価計算の結果を決算書へつなぐことに注目します。材料費・労務費・経費には直接費と間接費の両方を含め、それらを合計した後に同じ間接費を重ねて加えません。
| 元の資料 | 決算で確かめること |
|---|---|
| 材料の購入額 | 期首にあった材料も含め、期末の未使用材料を差し引く |
| 工場賃金の支払額 | 前期分の未払賃金を除き、当期末の未払賃金を加える |
| 工場経費の支払額 | 当期に対応しない前払分を除き、必要な未払分などを調整する |
| 販売部門の給料など | 製造原価に含めず、販売費及び一般管理費として扱う |
工場賃金の期首未払額は、前期の費用です。当期に支払ったからといって、当期の労務費へ重ねて含めません。
例題 決算整理から製造原価報告書へ
当期の製造原価に関する資料は次のとおりであった。材料の減耗・評価損、原価差異はない。工場経費に材料費・労務費との重複はなく、他の製造費用はない。
(単位:円)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 期首材料 | 2,000 |
| 当期材料購入 | 9,000 |
| 期末材料 | 3,000 |
| 工場賃金の当期支払額 | 6,000 |
| 工場賃金の期首未払額 | 500 |
| 工場賃金の期末未払額 | 1,000 |
| 工場経費の当期支払額 | 4,000 |
| 工場経費の期末前払額 | 500 |
| 期首仕掛品 | 2,000 |
| 期末仕掛品 | 3,000 |
工場経費に期首前払額や未払額はなく、当期に消費した額は支払額から期末前払額を差し引いて求める。
当期に消費した原価を求める
材料費は、使える材料11,000円から、未使用の3,000円を差し引きます。工場賃金は支払額から前期分を除き、未払いの当期分を加えます。
| 当期の製造費用 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 材料費 | 2,000+9,000−3,000 | 8,000 |
| 労務費 | 6,000−500+1,000 | 6,500 |
| 経費 | 4,000−500 | 3,500 |
| 合計 | 8,000+6,500+3,500 | 18,000 |
支払額の合計ではなく、当期に製造のために消費した18,000円を使います。
仕掛品の増減を反映する
当期に完成する製品には、前期から製造中だった分も含まれるため、期首仕掛品を加えます。期末に未完成の分は、まだ製品になっていないので差し引きます。
(単位:円)
| 製造原価報告書 | 金額 |
|---|---|
| 材料費 | 8,000 |
| 労務費 | 6,500 |
| 経費 | 3,500 |
| 当期製造費用 | 18,000 |
| 期首仕掛品 | 2,000 |
| 合計 | 20,000 |
| 控除:期末仕掛品 | 3,000 |
| 当期製品製造原価 | 17,000 |
当期製品製造原価は、当期に完成した製品の原価です。この17,000円を、損益計算書の売上原価計算へ引き継ぎます。
製品の在庫を調整して売上原価へつなぐ
同じ会社の期首製品は4,000円、期末製品は2,000円、売上高は30,000円、販売費及び一般管理費は5,000円であった。営業外損益・特別損益・税金はない。
販売できる製品の原価は、期首製品4,000円と当期完成分17,000円の合計21,000円です。まだ売れていない期末製品2,000円を差し引いて、売上原価を求めます。
(単位:円)
| 損益計算書 | 金額 |
|---|---|
| 売上高 | 30,000 |
| 売上原価の内訳:期首製品 | 4,000 |
| 売上原価の内訳:当期製品製造原価 | 17,000 |
| 売上原価の内訳:合計 | 21,000 |
| 売上原価の内訳:控除する期末製品 | 2,000 |
| 売上原価 | 19,000 |
| 売上総利益 | 11,000 |
| 販売費及び一般管理費 | 5,000 |
| 営業利益 | 6,000 |
販売費及び一般管理費は、製造原価報告書へ加えるのではなく、売上総利益から差し引きます。この条件では他の損益や税金がないため、当期純利益も6,000円です。
期末に残る原価を貸借対照表へ置く
材料、仕掛品、製品は、次のように状態が異なる棚卸資産です。
| 期末の状態 | 科目 | この例の金額 |
|---|---|---|
| まだ製造に使っていない | 材料 | 3,000 |
| 製造途中 | 仕掛品 | 3,000 |
| 完成したが未販売 | 製品 | 2,000 |
| 棚卸資産合計 | 8,000 |
期末材料は材料費を求める段階、期末仕掛品は完成品原価を求める段階、期末製品は売上原価を求める段階で、それぞれ費用・原価から除いています。同じ在庫を売上原価からもう一度まとめて差し引きません。
この会社の棚卸資産以外の期末資産が16,000円、期末負債合計が4,000円であったとする。これらは、前払工場経費500円や未払工場賃金1,000円も反映済みの残高である。期首純資産は14,000円で、出資・配当などの変動はなかった。
(単位:円)
| 貸借対照表の項目 | 金額 |
|---|---|
| 棚卸資産 | 8,000 |
| その他の資産 | 16,000 |
| 資産合計 | 24,000 |
| 負債合計 | 4,000 |
| 純資産合計 | 20,000 |
| 負債・純資産合計 | 24,000 |
純資産は24,000−4,000=20,000円です。また、期首純資産14,000円に当期純利益6,000円を加えても20,000円となり、損益計算書とつながります。
まとめ
- 購入額・支払額を、当期に製造のために消費した額へ整理します
- 仕掛品の増減で当期製品製造原価を求め、製品の増減で売上原価へつなぎます
- 未使用・未完成・未販売の原価は、それぞれ材料・仕掛品・製品として残します
- 当期利益と期末純資産をつなぎ、資産と負債・純資産の一致を確かめます