簿記2級で学ぶ利益準備金の積立額の計算について、配当を決めたときの仕訳とあわせて解説します。
利益準備金とは?
利益準備金は、純資産のうち利益剰余金に入る勘定科目です。会社が繰越利益剰余金から株主に配当をするとき、会社法の決まりにしたがって積み立てます。
たとえば、お店を経営している会社が、1年間の利益の中から株主に配当を出すとします。配当を出せば、そのぶん会社のお金は外に出ていきます。そこで会社法は、配当をするたびに、その一部を会社の中に準備金として積み立てるよう定めています。
お小遣いにたとえると、外に出すお金の1割を貯金箱にも入れておくルールに近いです。ただし、この貯金箱には上限があって、いっぱいになったらもう入れなくてよい、というところまでがセットになっています。
利益準備金という勘定科目や、配当のときに利益準備金を積み立てる仕訳は、3級でも出てきます。積立額を自分で計算するのは2級の範囲です。出題区分表でも、「準備金積立額の算定」は2級に置かれています。
積立額は2つの金額の少ない方
繰越利益剰余金から配当するときは、次の2つの金額を計算して積立額を求めます。
| 計算する金額 | 求め方 |
|---|---|
| ① 配当額の10分の1 | 配当額 × 1/10 |
| ② 資本金の4分の1までの残り | 資本金 × 1/4 -(資本準備金 + 利益準備金) |
①と②を比べて、少ない方の金額を利益準備金として積み立てます。
①がふだんの積立額で、②が上限までの残りの枠です。枠に余裕があれば配当額の10分の1をそのまま積み立て、枠が残り少なければ枠の分だけを積み立てます。資本準備金と利益準備金の合計が、すでに資本金の4分の1に達しているときは、積み立ては不要です。

②では資本準備金も引く
ここで迷う人が多いのが、②で引く金額です。名前が「利益準備金」なので、利益準備金だけを引きたくなりますが、引くのは資本準備金と利益準備金の合計です。
会社法では、資本準備金と利益準備金をまとめて「準備金」と呼んでいます。資本金の4分の1と比べるのも、この準備金の合計です。貯金箱のたとえでいうと、貯金箱は1つで、そこに資本準備金と利益準備金の両方が入っているイメージです。
資本準備金は、株式を発行したときに、払込金額のうち資本金にしなかった部分などで計上されます。株式を発行したときの仕訳は、次の記事で解説しています。
10分の1と4分の1を取り違えない
10分の1と4分の1は、どちらに何を掛けるのか、最初は逆に覚えがちです。配当額に掛けるのが10分の1、資本金に掛けるのが4分の1です。「配当の1割を積み立てる。ただし、準備金の合計は資本金の4分の1まで」と、文章でまとめて覚えておくと取り違えにくくなります。
配当を決めたときの仕訳
株主総会で配当が決まった時点では、まだ株主にお金は払っていません。そのため、配当額は未払配当金(負債)として計上します。
そして、配当額と利益準備金の積立額は、どちらも繰越利益剰余金を減らして計上します。借方の繰越利益剰余金は、配当額と積立額を足した金額になります。
枠に余裕があるとき
株主総会で、繰越利益剰余金を財源として、株主配当金300,000円の支払いが決議された。利益準備金は会社法に定める金額を積み立てる。なお、配当前の資本金は2,000,000円、資本準備金は200,000円、利益準備金は100,000円である。
まず、①の配当額の10分の1は
300,000円 × 1/10 = 30,000円
次に、②の資本金の4分の1までの残りは
2,000,000円 × 1/4 -(200,000円 + 100,000円)= 200,000円
①の30,000円の方が少ないので、積立額は30,000円です。借方の繰越利益剰余金は、300,000円と30,000円を足した330,000円になります。
よって、仕訳は以下のようになります。
借方科目 | 金額 |
貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
繰越利益剰余金 | 330,000 | 未払配当金 | 300,000 |
利益準備金 | 30,000 |
枠が残り少ないとき
株主総会で、繰越利益剰余金を財源として、1株につき100円の配当が決議された。発行済株式数は4,000株である。利益準備金は会社法に定める金額を積み立てる。なお、配当前の資本金は2,000,000円、資本準備金は300,000円、利益準備金は180,000円である。
配当額は、1株あたりの配当に株式数を掛けて求めます。
100円 × 4,000株 = 400,000円
①の配当額の10分の1は
400,000円 × 1/10 = 40,000円
②の資本金の4分の1までの残りは
2,000,000円 × 1/4 -(300,000円 + 180,000円)= 20,000円
今度は②の20,000円の方が少ないので、積立額は20,000円です。配当額の10分の1の40,000円を積み立てると、準備金の合計が資本金の4分の1を超えてしまうため、枠に収まる分だけを積み立てます。
よって、仕訳は以下のようになります。
借方科目 | 金額 |
貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
繰越利益剰余金 | 420,000 | 未払配当金 | 400,000 |
利益準備金 | 20,000 |
ちなみに、例題2で資本準備金と利益準備金の合計が500,000円以上あった場合は、すでに資本金の4分の1に達しているので、利益準備金は積み立てません。仕訳は、借方の繰越利益剰余金400,000円と、貸方の未払配当金400,000円だけになります。
配当金を支払ったとき
後日、配当金を支払ったときは、未払配当金を減らします。例題2の配当金を当座預金から支払った場合は、次のようになります。
借方科目 | 金額 |
貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
未払配当金 | 400,000 | 当座預金 | 400,000 |
配当を決めたときと支払ったときで仕訳が分かれる点は、アルバイト代の金額が決まる日と、実際に口座に振り込まれる日が別なのと似ています。決議の時点で当座預金を減らしてしまうミスは、このタイミングの違いを意識すると防ぎやすくなります。
つまずきやすいところ
よくあるのは、配当額の10分の1だけを計算して、②の枠を確かめずに答えてしまうミスです。例題1のように10分の1で済む問題が続くと、つい②を飛ばしたくなります。積立額は、①と②の両方を出してから少ない方を選ぶ、という順番で毎回計算すると安心です。

もうひとつよくあるのが、借方の繰越利益剰余金を配当額だけにしてしまうミスです。利益準備金の積立額も繰越利益剰余金を減らして積み立てるので、借方は配当額と積立額の合計になります。仕訳を書いたら、借方と貸方の合計が一致しているかを確かめてください。
また、配当と一緒に別途積立金などの任意積立金を積み立てることもあります。その場合も、積み立てる金額は繰越利益剰余金から振り替えるので、借方の繰越利益剰余金にその金額も含めます。
ちなみに、その他資本剰余金を財源として配当するときは、利益準備金ではなく資本準備金を積み立てます。2級の問題では、繰越利益剰余金からの配当で利益準備金を積み立てる形が中心です。
試験での出方と練習
試験では、第1問の仕訳問題のほか、株主資本等変動計算書を作る問題でも利益準備金の積立額を計算する場面があります。どちらも計算の手順は同じです。
利益準備金・繰越利益剰余金は簿記3級の勘定科目一覧、資本準備金は簿記2級の勘定科目一覧で、ほかの純資産の科目と並べて確認できます。
デビクレの簿記2級では、2026年度試験向けのレッスンを順次公開していて、今は試験範囲の一部を扱っています。第1問形式の仕訳道場や模試もあるので、仕訳の練習に使えます。
まとめ
利益準備金は、繰越利益剰余金から配当をするときに積み立てます。積立額は、配当額の10分の1と、資本金の4分の1から資本準備金と利益準備金の合計を引いた残りを比べて、少ない方の金額です。準備金の合計がすでに資本金の4分の1に達しているときは、積み立ては不要です。
仕訳は、配当を決めたときに繰越利益剰余金を減らして未払配当金と利益準備金を計上し、配当金を支払ったときに未払配当金を減らします。利益準備金の計算は、手順さえ決めてしまえば、毎回同じ流れで解けます。①と②の両方を出して少ない方を選ぶこと、資本準備金も忘れずに引くことの2点を意識して、仕訳問題で何度か手を動かしてみてください。