ファクタリングの仕訳について解説します。名前だけ聞くと金融の専門用語のようで身構えてしまいますが、やっていることは「まだ入金されていない売掛金を、期日より前に売って現金にする」というシンプルな取引です。
たとえば、近所のカフェやホテルにパンを卸しているお店を思い浮かべてください。代金は月末にまとめて請求し、入金は翌月末になります。アルバイト先で、そんな「掛け」の取引を見たことがある人もいるかもしれません。ただ、新しいオーブンを買いたいのに、入金はまだ先ということもあります。そんなときに、売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらい、手数料を差し引いた額を先に受け取るのがファクタリングです。
ファクタリングは「売掛金を売る」取引
まず押さえておきたいのは、ファクタリングはお金を借りる取引ではなく、売掛金という債権を売る取引だということです。借りたわけではないので、借入金は出てきません。売った売掛金は手元からなくなるので、売掛金を減らします。
もうひとつのポイントが手数料です。600,000円の売掛金を売って588,000円しか受け取れなかったなら、差額の12,000円は「売掛金を売ったことによる損」と考えます。この損は債権売却損という勘定科目で処理します。
ちなみに、勘定科目の名前は年度で少し変わります。2026年度の試験(2027年3月31日まで)に使われる勘定科目表では、2級の標準的な科目は「債権売却損」です。2027年度の表では「売掛債権売却損」が標準になり、「債権売却損」も採点上認められる科目として載っています。試験では問題文に並んだ勘定科目から選ぶので、そこにある名前を使ってください。この先の仕訳では「債権売却損」で書いています。
3社間と2社間の違い
ファクタリングには、得意先(売掛金を払う側)が関わるかどうかで、3社間と2社間の2つの形があります。
3社間ファクタリングでは、得意先にも売掛金を譲渡したことを知らせて承諾してもらいます。期日になると、得意先はファクタリング会社に直接支払います。2社間ファクタリングでは、得意先には知らせずに、自社とファクタリング会社の2社だけで契約します。得意先はいつもどおり自社に支払うので、自社がいったん受け取って、そのお金をファクタリング会社に渡すことになります。

出題区分表では、2026年度の試験に使われる区分表の2級に「その他の債権譲渡」という項目があり、2027年度の区分表でこれが「売掛債権の譲渡(ファクタリング)」とはっきり書かれるようになりました。どちらも※印付きで、本来は上級の範囲だけれど2級でも簡易な内容を出題する、という扱いです。2027年度の改定の説明書では、2級は買取型の3社間・2社間ファクタリングの簡易な出題に限り、2社間は債権譲渡登記が済んでいるケースを想定するとされています。譲渡にともなう買戻しや遡求(リコース)の義務を計上する論点は、1級の範囲です。
3社間ファクタリングの仕訳
まずは流れがすっきりしている3社間から見ていきます。
パン工房「こむぎ堂」は、港町ホテルにパンを掛けで600,000円販売した。その後、資金が早く必要になったため、この売掛金を3社間ファクタリングでファクタリング会社に譲渡した。港町ホテルの承諾を得て、手数料2%を差し引いた金額が普通預金口座に振り込まれた。
掛けで売ったときは、いつもどおりの仕訳です。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 600,000 | 売上 | 600,000 |
ファクタリングで売掛金を売ったときは、手数料が600,000円の2%で12,000円なので、受け取るのは588,000円です。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 588,000 | 売掛金 | 600,000 |
| 債権売却損 | 12,000 |
支払期日になると、港町ホテルはファクタリング会社に直接支払います。こむぎ堂のお金は動かないので、仕訳はありません。売掛金はすでに減らしてあるので、ここで何か書き足す必要もないわけです。
2社間ファクタリングの仕訳
2社間は、得意先が自社に支払うぶん、仕訳が2つ増えます。つまずく人が多いのもここです。
こむぎ堂は、カフェひだまりに対する売掛金400,000円を、2社間ファクタリングでファクタリング会社に譲渡した(債権譲渡登記済み)。手数料4%を差し引いた金額が普通預金口座に振り込まれた。
譲渡したときの考え方は3社間と同じです。手数料は400,000円の4%で16,000円、受け取るのは384,000円です。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 384,000 | 売掛金 | 400,000 |
| 債権売却損 | 16,000 |
支払期日に、カフェひだまりから売掛金400,000円が普通預金口座に振り込まれた。
ここで「売掛金が回収できた」と考えて、貸方に売掛金と書きたくなります。でも、この売掛金はもうファクタリング会社に売ってしまったので、こむぎ堂の帳簿には残っていません。受け取った400,000円は、ファクタリング会社に渡すために一時的に預かっているお金です。そこで、預り金で処理します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 400,000 | 預り金 | 400,000 |
預かっていた400,000円を、普通預金口座からファクタリング会社に支払った。
預かっていたお金を渡したので、預り金を減らします。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金 | 400,000 | 普通預金 | 400,000 |
たとえるなら、友だちあてのお金を代わりに受け取って、あとで本人に渡すようなものです。自分の売上でも回収でもないので、受け取ったときも渡したときも、損益は出てきません。

つまずきやすいところ
いちばん多いのは、さきほどの2社間の入金で売掛金を減らしてしまうミスです。売掛金を減らすのは譲渡したときの一度だけ、と覚えておくと迷いにくくなります。あとから入金があっても、それはファクタリング会社のためのお金です。
手数料を支払手数料で書いてしまうのも、よくある迷いどころです。ファクタリングの手数料は、売掛金を額面より安く売ったことによる差額なので、2級では債権売却損で処理します。問題文の勘定科目の中に債権売却損(または売掛債権売却損)があれば、そちらを選びます。
3社間と2社間の区別は、問題文の書き方で見分けられます。「得意先の承諾を得た」「得意先に通知した」とあれば3社間、「債権譲渡登記済み」「得意先には通知していない」とあれば2社間と考えられます。得意先が支払う相手がファクタリング会社か自社かで、期日の仕訳があるかどうかが決まります。
損益計算書・貸借対照表での表示
債権売却損は、損益計算書では営業外費用に表示します。パンを作って売るという本業からではなく、資金を早く用意するための取引から生じた損なので、売上原価や販売費及び一般管理費には入れません。
貸借対照表では、譲渡した売掛金は売掛金の残高から外れます。手元に残っていない債権なので、期末に貸倒引当金を見積もるときも、売った売掛金は計算に含めません。
ちなみに、2社間ファクタリングで得意先から入金があり、ファクタリング会社にまだ渡していないうちに決算日を迎えた場合は、預り金が残ります。預り金は流動負債として表示します。
売掛金が回収できなくなったときの処理や、貸倒引当金の考え方は、次の記事で解説しています。
手形や電子記録債権の割引と比べる
「債権を期日より前に手放して現金にする」という点では、手形の割引や電子記録債権の割引も同じ発想です。手形を割り引いたときの差額は手形売却損、電子記録債権を割り引いたときの差額は電子記録債権売却損で処理します。ファクタリングは、その売掛金版と考えるとつながりが見えてきます。
なお、紙の手形の廃止にともない、2027年度の出題区分表からは手形の項目がなくなります。手形の割引や裏書譲渡は、2026年度の試験(2027年3月31日まで)の範囲として学んでください。
手形を取引先に渡して支払いにあてる裏書譲渡は、次の記事で解説しています。
2級の勘定科目をまとめて確認したいときは、簿記2級の勘定科目一覧も使えます。試験の範囲や、受験する年度にどの区分表が使われるかは、簿記2級の出題範囲と問題構成で確認できます。
デビクレの簿記2級では、2026年度試験向けのレッスンと確認問題を順次公開しています。今は試験範囲の一部を扱っています。
まとめ
| 確認したいこと | 要点 |
|---|---|
| ファクタリングとは | 期日前の売掛金を売って、早めに現金にする取引 |
| 手数料の処理 | 債権売却損(2027年度の標準科目は売掛債権売却損) |
| 3社間 | 譲渡時に売掛金を減らす。期日に自社の仕訳はない |
| 2社間 | 譲渡時に売掛金を減らす。得意先からの入金は預り金、ファクタリング会社に渡したら預り金を減らす |
| 表示 | 債権売却損は営業外費用。期末に残った預り金は流動負債 |
| 2級の範囲 | 2027年度の改定では、買取型の3社間・2社間の簡易な出題。買戻し・遡求義務の計上は1級 |
ファクタリングは、言葉の印象ほど複雑な仕訳ではありません。「売掛金を売った」「差額は債権売却損」「2社間であとから入るお金は預かりもの」の3つがつながれば、問題文が少し長くても落ち着いて読めるはずです。
参考
- https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/exam-list
- https://www.kentei.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2024/12/shogyouboki_kubun.pdf
- https://www.kentei.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2014/10/2027kubunhyo_fixed.pdf
- https://www.kentei.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2014/10/2027_kaitei_shushi_fixed.pdf
- https://www.kentei.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2021/12/2022_kamoku.pdf
- https://www.kentei.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2014/10/2027kamokuhyo_fixed.pdf