貸借対照表と損益計算書の読み方と違いについて解説します。どちらも、簿記を学んでいると何度も出てくる表です。名前が硬いので身構えてしまいがちですが、見る順番さえ決めてしまえば、読むのはそれほど難しくありません。どこから読むと会社の様子がつかみやすいかを、小さなお店の例で見ていきます。
2つの表は「いまの状態」と「1年の成績」
ひとことで言うと、貸借対照表はある時点で会社が何を持っていて、そのお金をどこから用意したかを表す表です。損益計算書は1年間でどれだけ稼いで、どれだけ使い、いくら儲かったかを表す表です。
たとえば、お小遣いで考えてみてください。月末に財布と貯金箱を開けて「いま手元に5,000円ある」と数えるのが貸借対照表に近い見方です。一方、「今月は8,000円もらって、6,000円使ったから、2,000円残った」と1か月をふり返るのが損益計算書に近い見方です。前者はある瞬間の写真、後者は一定期間の動画、とイメージすると区別しやすくなります。
この違いを、簿記では「ストック(その時点の残高)」と「フロー(期間中の動き)」という言葉で表します。損益計算書の金額は会計期間が終わるとリセットされますが、貸借対照表の金額はそのまま次の期に持ち越されます。ここで混乱する人が多いので、最初に押さえておくと後がずっと楽です。
ちなみに、英語では貸借対照表をB/S(Balance Sheet)、損益計算書をP/L(Profit and Loss Statement)と呼びます。テキストや会社の資料でこの略称だけが出てくることもあります。
簿記全体の流れの中で、2つの表がどこで出てくるかは次の記事で解説しています。
貸借対照表の読み方
貸借対照表は、左側(借方)に資産、右側(貸方)に負債と純資産を並べます。右側は負債が上、純資産が下です。そして左右の合計は必ず一致します。資産の金額は、負債と純資産を足した金額と等しくなる、という関係です。
ここでは、街のパン屋さんの期末の貸借対照表を例にします。金額は説明用の例です。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 300,000 | 買掛金 | 100,000 |
| 商品 | 100,000 | 借入金 | 200,000 |
| 備品 | 400,000 | 資本金 | 400,000 |
| 繰越利益剰余金 | 100,000 | ||
| 合計 | 800,000 | 合計 | 800,000 |
まず右側で「お金をどこから用意したか」を見る
意外かもしれませんが、読み始めは右側から見るのがおすすめです。右側は、お店を動かすお金の出どころを表しています。
このパン屋さんなら、仕入先にまだ払っていない買掛金と、銀行からの借入金があわせて300,000円で、これはいずれ返す必要のあるお金(負債)です。残りの500,000円は、元手として出した資本金と、これまでに稼いで積み上げた利益で、返す必要のないお金(純資産)です。
「借りたお金がどのくらいの割合か」を見るだけでも、そのお店がどんな形で回っているのかが少し見えてきます。
次に左側で「何に使っているか」を見る
左側の資産は、右側で集めたお金が、いまどんな形になっているかを表します。パン屋さんの場合、現金で300,000円、売っているパンや、仕入れて持っている材料などを、ここではまとめて商品の欄に置いています(100,000円)。オーブンなどの備品で400,000円です。
すぐに使えるお金がどのくらいあるか、設備にどれくらいお金が寝ているか、という目で見ると、数字がただの一覧ではなくなってきます。
最後に純資産を見る
純資産のうち、繰越利益剰余金は「これまでに稼いだ利益の積み上げ」です。ここが増えていれば、利益を出しながらお店を続けてきたことが分かります。逆に、損失が続くと減っていきます。
このあと損益計算書の話をすると、ここが2つの表をつなぐ場所になっていることが分かります。
損益計算書の読み方
損益計算書は、左側(借方)に費用、右側(貸方)に収益を並べます。収益が費用より多いときは、その差額の当期純利益を左側に書き、左右の合計をそろえます。同じパン屋さんの1年間を例にします。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上原価 | 700,000 | 売上高 | 1,200,000 |
| 給料 | 300,000 | ||
| 支払家賃 | 100,000 | ||
| 当期純利益 | 100,000 | ||
| 合計 | 1,200,000 | 合計 | 1,200,000 |
まず一番下の利益を見る
損益計算書は、結論である当期純利益(または当期純損失)から見ると迷いにくくなります。このパン屋さんは、1年間で100,000円の利益を出しました。
最初は「利益は費用じゃないのに、なぜ左に書くの?」とつまずく人が多いです。これは、左右の合計をそろえるために差額を左に置いているだけで、利益が費用の仲間になったわけではありません。収益から費用を引いた残りを、表の形に収めるための置き場所だと考えてください。
次に売上と費用の中身を見る
利益の金額が分かったら、売上に対して何にお金がかかったのかを見ます。このパン屋さんでは、売上1,200,000円のうち、売ったパンの原価が700,000円です。売上から売上原価を引いた500,000円は「売上総利益」と呼ばれ、商品そのものでどれだけ稼げたかを表します。そこから給料や家賃を払って、最終的に100,000円が残った、という流れです。
アルバイト代が上がった、家賃が上がった、といった変化は、こうした費用の行に表れます。利益が減ったときは、売上が落ちたのか、費用が増えたのかを分けて見ると原因を探しやすくなります。
ちなみに、会社が公表する決算書では、損益計算書を左右に分けず、売上高から始めて、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益の順に、上から下へ段階的に利益を出していく形(報告式)で載せていることがよくあります。左右の形(勘定式)で中身を理解しておけば、報告式も「上から順に引き算している表」として読めます。
2つの表はどこでつながっているか
2つの表は別々に見えますが、損益計算書で出た当期純利益は、決算の手続きを通じて貸借対照表の純資産(繰越利益剰余金)に加わります。
パン屋さんの例でいえば、この1年の利益100,000円が、貸借対照表の繰越利益剰余金100,000円になっています(開業1年目で、前の期からの積み上げがない場合)。もし翌年も100,000円の利益が出れば、繰越利益剰余金は200,000円に増えます。
つまり、損益計算書は「今年どれだけ増えたか」、貸借対照表は「これまでの積み上げを含めていまいくらあるか」を表していて、利益がその橋渡しをしているわけです。このつながりは、簿記3級の帳簿の締切り(損益振替・資本振替)で仕訳として学びます。
読み方でつまずきやすいところ
学び始めの人がよく迷うのは、次のようなところです。
まず、「貸借対照表」という名前から、お金の貸し借りだけを書く表だと思ってしまうことです。ここでいう「貸借」は、借方(左)と貸方(右)のことです。借方・貸方は日常の「借りる・貸す」とは別の言葉なので、左右の名前として覚えてしまう方が早いです。
次に、損益計算書の売上と、貸借対照表の現金を同じものだと考えてしまうことです。たとえば、掛けで売った分は、売上には入っていても、まだ現金にはなっていません(売掛金という資産になります)。「儲かった金額」と「手元のお金」は、必ずしも一致しないのです。
もう一つは、収益と費用の金額そのものが左右で一致すると思ってしまうことです。一致するのは、当期純利益(または当期純損失)まで含めた左右の合計です。
勘定科目が資産・負債・純資産・収益・費用のどれに入るか迷ったときは、簿記3級の勘定科目一覧で確認できます。
練習するなら
読み方の感覚は、自分で表を作ってみると、ぐっとつかみやすくなります。デビクレは私たちが運営している無料の簿記学習サービスで、会員登録なしで使えます。
最初の一歩なら、3級コースのレッスン「貸借対照表と損益計算書」で、2つの表の配置とストック・フローの考え方を確認できます。決算まで学んだあとは、「財務諸表(貸借対照表・損益計算書)と精算表」のレッスンで作り方を学び、精算表・財務諸表の道場で同じ形式の問題を繰り返せます。
3級の学習の進め方は、簿記3級のページから確認できます。
まとめ
貸借対照表は期末時点の「いまの状態」、損益計算書は1年間の「成績」を表す表です。貸借対照表は右側でお金の出どころ、左側で使い道、最後に純資産の積み上げを見ると読みやすくなります。損益計算書は一番下の利益から見て、売上と費用の中身へさかのぼると、何が利益を動かしたのかが見えてきます。
2つの表は、当期純利益が繰越利益剰余金に加わるところでつながっています。まずは身近なお店を思い浮かべながら、左右に何が並ぶかを確かめるところから始めてみてください。