簿記2級の第4問・第5問でどんな問題が出るのかについて解説します。商業簿記はなんとか進んでいるのに、工業簿記は「仕掛品」「製造間接費」「差異」といった言葉が出てくるたびに読み返してしまう、という人もいるのではないでしょうか。しかも本試験の問題は公開されていないので、「結局、後半の大問で何を聞かれるのか」が見えにくいのも不安のもとです。
日本商工会議所が公開しているサンプル問題を見ると、第4問と第5問はどちらも工業簿記の問題です。どんな形で問われることが多いのかを大問ごとに見ていきます。ただし、具体的なテーマは回によって変わるので、「この論点だけ押さえれば大丈夫」という読み方はしないでください。
2級の試験全体の難しさや合格率は、次の記事で解説しています。
サンプル問題で見る第4問・第5問
2級の試験科目は、商業簿記と工業簿記(原価計算を含む)です。5題以内の問題を90分で解き、70%以上で合格です。
日本商工会議所のサイトで公開されている2級のサンプル問題は、第1問から第5問までの大問ごとに用意されていて、第4問はさらに(1)と(2)に分かれています。サンプル問題では、第1問から第3問が商業簿記、第4問と第5問が工業簿記の内容です。
ちなみに、どの大問を何の科目にするかや、大問ごとの配点は、公式サイトでは示されていません。また、過去の統一試験では、第3問で製造業を営む会社の決算が出され、工業簿記の知識も使う問題になったことがあります。「工業簿記は第4問と第5問だけ」と決めつけず、試験全体で工業簿記の考え方を使うことがある、と考えておくと安心です。
第4問(1)は工業簿記の仕訳
サンプル問題の第4問(1)は、工場で起きた取引の仕訳を3つ答える形です。勘定科目は、問題ごとに並んだ選択肢から選びます。
扱われている取引は、材料の購入や消費、賃金の消費、製造間接費の配賦、完成した製品の振替など、工業簿記の流れの中で毎月出てくるものが中心です。標準原価計算を採用している会社の仕訳や、本社と工場の帳簿を分けている会社の仕訳が出ているサンプルもあります。
商業簿記の仕訳と違うのは、お金や取引先とのやり取りよりも、工場の中で原価がどの勘定からどの勘定へ移っていくかを書く仕訳が多いことです。たとえば、製品の材料として使った分と、工場の機械に差す油のように工場全体で使った分では、振り替える先が変わります。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕掛品 | 120,000 | 材料 | 150,000 |
| 製造間接費 | 30,000 |
製品のために直接使った120,000円は仕掛品へ、工場全体で使った30,000円は製造間接費へ振り替えています。この「どこへ振り替えるか」の判断が、第4問(1)の多くの問題の土台になります。材料費の分け方は、直接材料費と間接材料費の違いでも確認できます。
第4問(2)は原価の計算と勘定記入
第4問(2)は、資料をもとに原価を計算して、勘定の空欄や製造原価報告書を完成させる形がサンプル問題に多く見られます。
テーマはサンプル問題ごとに違っていて、注文を受けて製品ごとに原価を集める個別原価計算、同じ製品をくり返し作る工場の総合原価計算(組別総合原価計算を含む)、あらかじめ決めた原価と実際の原価を比べる標準原価計算などが出ています。
身近なもので言えば、注文ごとにデザインが違うオーダーメイドのケーキ屋さんは個別原価計算、毎日同じ食パンを焼き続けるパン工場は総合原価計算のイメージです。どちらの工場なのかを最初に読み取れると、資料のどこから手をつければいいかが見えやすくなります。
第4問(2)で手が止まりやすいのは、計算そのものよりも、計算した金額をどの勘定のどちら側に書くかがあいまいなときです。日本商工会議所が公開している過去の講評でも、勘定と勘定のつながり(勘定連絡図)を意識して学ぶことが大切だと述べられています。
第5問は差異分析・直接原価計算・CVP分析など
第5問のサンプル問題では、標準原価計算の差異分析、直接原価計算による損益計算書、CVP分析(原価・営業量・利益の関係の分析)などが出ています。会話文の空欄を埋める形や、記述のうち適切でないものを選ぶ形もあり、計算の結果がどんな意味を持つのかまで問われることがあります。
CVP分析は、言葉は難しそうですが、考え方はお祭りの屋台でも使えます。たとえば、1杯300円のかき氷の材料費が1杯100円、出店料が20,000円なら、1杯売るごとに残るのは200円です。出店料を取り戻すには100杯売る必要があり、この100杯が損益分岐点の販売数量です。
標準原価計算の差異分析では、差異の金額だけでなく、それが借方差異(不利差異)か貸方差異(有利差異)かも答えることが多いです。過去の講評では、材料の消費価格差異と消費数量差異の計算に苦労した受験者が多く、標準の単価や消費量は資料の原価標準から読み取る必要があったと書かれています。
全部原価計算と直接原価計算で営業利益が変わる理由は、全部原価計算と直接原価計算の違いで解説しています。
テーマは回ごとに変わる
ここまで紹介したのは、公式のサンプル問題で見られる形です。本試験でどの論点がどの大問に出るかは、回ごとに変わります。受験指導校などが分析する「よく出るパターン」も、公式に決まった出題の型ではありません。
日本商工会議所の講評には、一部の取引パターンだけに山を張っていた受験者には戸惑った人も多かったのではないか、という趣旨の記述もあります(商業簿記の大問についての講評です)。工業簿記でも、テーマを一つに決めて準備するのはおすすめしにくいです。
試験の範囲は、出題区分表で確かめられます。2級の工業簿記では、費目別計算(材料費・労務費・経費)、製造間接費の配賦、部門別計算、個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算、直接原価計算、CVP分析などが範囲に入っています。2026年度の試験(2027年3月31日まで)と2027年度の試験では、商業簿記の区分表は変わりますが、工業簿記・原価計算の区分表は変わりません。
2級・3級の本試験の問題が公開されていない理由と、代わりに使える公式の教材は、次の記事で解説しています。
つまずきやすいところと学び方
工業簿記でつまずく原因は、個別の計算方法より手前にあることがよくあります。材料費・労務費・経費が仕掛品に集まり、製品になって売上原価へ移っていく流れが、まだつかめていないのです。講評でも、費目別計算は工業簿記の学習の「入り口」とされています。後半の大問が不安なときほど、まずこの入り口に戻ると、第4問(1)の仕訳と第4問(2)の勘定記入がつながって見えてきます。
そのうえで、個別原価計算・総合原価計算・標準原価計算・直接原価計算とCVP分析を、ひとつずつ「どんな工場(会社)の、何のための計算か」と結びつけて進めると、知らない資料が出ても落ち着いて読みやすくなります。
ちなみに、過去の講評では、解き始める前に問題全体を見回して、時間をどう配分するかを考えることの大切さにも触れられています。工業簿記は、資料を順に読み取って書き出していけば解きやすくなる問題も多いので、通しの問題を解く練習で、第4問・第5問にかける時間の感覚もつかんでおくと、本番であわてにくくなります。
デビクレの簿記2級では、工業簿記のレッスンと確認問題、第4問(1)形式の仕訳道場、第4問(2)・第5問形式の原価計算道場を公開しています。2級の教材は2026年度試験向け(2027年3月31日まで)で、今は試験範囲の一部を扱っています。試験の科目・題数・時間や、受験する年度にどの区分表が使われるかは、簿記2級の出題範囲と問題構成でも確認できます。
まとめ
| 確認したいこと | 要点 |
|---|---|
| 第4問・第5問の科目 | 公式のサンプル問題では、どちらも工業簿記 |
| 第4問(1) | 工場の取引の仕訳を、選択肢の勘定科目で答える形 |
| 第4問(2) | 個別・総合・標準原価計算などの計算と、勘定や製造原価報告書の記入 |
| 第5問 | 差異分析、直接原価計算、CVP分析など。会話文や選択の形もある |
| テーマ | 回ごとに変わる。「必ず出るパターン」は公式には決まっていない |
| 範囲の確認 | 出題区分表。工業簿記の区分表は2027年度も変更なし |
第4問・第5問の手応えは、何が出るかを当てることよりも、材料・人・経費が製品の原価になっていく流れを自分の言葉で説明できるかどうかで変わってきます。見慣れない資料が出ても、その流れに戻れば手をつけるところは見つかるはずです。